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特別法犯の検挙件数および検挙人員数を示す統計がないので,ここでは,検察統計に示された検察庁の新規受理人員数によって,特別法犯の傾向をみることとする。
昭和四二年中における特別法犯の検察庁新規受理人員数を,前年と対比しながら,その概要をみると,I-24表のとおりである。 I-24表 特別法犯の検察庁新規受理人員(昭和41,42年) これによると,昭和四二年の道路交通法違反を除く特別法犯の受理人員は,二四二,八九一人で,前年より約六万四千人増加しており,道路交通法違反は,四,五七〇,〇七九人で,これも,前年より約九万人増加している。この表で最も目につくのは,まず,公職選挙法違反が,前年に比し,約六・三倍に増加している点であるが,これは,昭和四二年一月に衆議院議員総選挙,同年四月に統一地方選挙が行なわれて,多数の違反者を出したことによるものである。 次に,自動車損害賠償保障法違反が,前年の約二倍に増加しているが,これは,昭和四一年六月,同法の改正により,新たに,原動機付自転車が,この法律で定める自動車損害賠償責任保険の対象となったことなどのためと思われる。 次に,大麻取締法違反,「自動車の保管場所の確保等に関する法律」違反が,増加の傾向を示しているのは注目される。 逆に,前年に比べて減少の著しいのは,たばこ専売法違反,酒税法違反,あへん法違反,麻薬取締法違反,食糧管理法違反,外国人登録法違反等で,これらは,約四割ないし約三割の減少をみせている。 次に,昭和四二年を中心として最近における特別法犯の動きを,保安関係,財政経済関係,麻薬・覚せい剤関係,風俗関係などに分けて,詳しくみることとする。なお,選挙犯罪,交通犯罪については,章を改めて検討するのでここでは省略する。 まず,保安関係の特別法犯の,最近五年間の検察庁新規受理人員数の動きをみると,I-25表のとおりである。銃砲刀剣類所持等取締法違反の新規受理人員数は,昭和四〇年までは,逐年増加の傾向を示していたが,昭和四一年からは減少している。ところで,同法違反の大部分は,同法第三条違反の不法所持犯であるから,その所持の対象ごとに分けてみると,I-26表のとおりである。これによると,昭和四二年は,前年に比べ,建設用銃が増加しているほかは,けん銃,猟銃をはじめ,刀,あいくちにいたるまで,すべて減少している。次に,火薬類取締法違反は,年々増加して,昭和四二年には,昭和三八年の一・五倍以上の受理人員を示しているのが注目される。なお,I-25表には,軽犯罪法違反と「酒に酔って公衆に迷惑をかける行為の防止等に関する法律違反」との新規受理人員数を掲げているが,これらの違反行為中には,少なからず保安に関係がある犯罪行為を含んでいるので,参考までに掲げたのである。 I-25表 保安関係特別法犯検察庁新規受理人員(昭和38〜42年) I-26表 銃砲刀剣類所持等取締法第3条違反の検挙人員(昭和38〜42年) 次に,財政経済関係の特別法犯について,最近五年間の新規受理人員の推移をみると,I-27表のとおりである。関税法違反は,昭和三九年に,相当大幅な増加をみたものの,その後は,急激に減少した。しかし,昭和四二年は,前年に比べ,やや増加しているのが目につく。外国為替及び外国貿易管理法違反は,昭和四〇年まで,増加の傾向を示しており,昭和四一年には,急激に減少したが,昭和四二年は,再び増加の傾向をみせている。I-27表 財政経済関係特別法犯検察庁新規受理人員(昭和38〜42年) 「出資の受入,預り金及び金利等の取締等に関する法律」違反は,逐年増加の傾向を示していたが,昭和四二年は,大幅に減少している。食糧管理法違反は,昭和四〇年に増加したほかは,年々大幅に減少し,昭和四二年は,昭和三八年を一〇〇とする指数で示すと,三三となっている。酒税法違反は,年々大幅な減少傾向にあって,昭和四二年には,昭和三八年を一〇〇とする指数で示すと一二にすぎない。次に,麻薬・覚せい剤関係の特別法犯について,最近五年間の推移をみると,I-28表のとおりである。麻薬取締法違反は,昭和三九年には激減し,その後は,横ばい状態を続けていたが,昭和四二年は,前年に比し,相当数の減少を示している。あへん法違反は,昭和四一年まで,逐年増加の傾向を示していたが,昭和四二年には,大幅に減少しているのが目だつ。これに反し,大麻取締法違反は,昭和四一年を除き,逐年増加し,昭和四二年には,昭和三八年を一〇〇とすると,二一三になっている。なお,昭和四二年の麻薬犯罪の実態について,警察庁の調査結果によると,大麻関係事犯の特色は,密輸入事犯が急激に増加したことと,国内に大麻を吸煙する者が増加の傾向にあるとされている。覚せい剤取締法違反は,昭和三八年以降,減少し,昭和四一年には,わずかに増加したものの,昭和四二年は再び減少している。 I-28表 麻薬,覚せい剤関係特別法犯検察庁新規受理人員(昭和38〜42年) 次に,風俗犯関係について,新規受理人員の推移をみると,I-29表のとおりである。売春防止法違反は,逐年減少を続けているが,もともと,売春事犯には,潜在犯罪が多いとされており,この統計面の減少が直ちに実際の減少を意味するものとは,必ずしも断定できない。風俗営業等取締法違反の受理人員は,昭和三八年以降,逐年増加し,昭和四二年には,昭和三八年を一〇〇とすると一五八という数字を示している。職業安定法と児童福祉法違反は,いずれも,昭和三八年以降,おおむね増加の傾向にあり,昭和四二年には,昭和三八年に比べると,前者は約一・七倍,後者は約二・五倍となっているが,この種の犯罪は,ややもすると,売春や人身売買あるいは暴力団の資金かせぎと非常に密接な関係があるので,その動向には注意を要する。競馬法違反と自転車競技法違反は,昭和三八年以降漸増の傾向を示していたが,昭和四二年には,いずれも,前年より減少している。なお,これらの違反行為の大部分は,私設の馬券や車券を客に売り,これが的中すると,配当金を渡すというやり方の,勝者投票類似行為で,俗に「のみ行為」といわれているものであるが,これらは,暴力団関係者あるいはそれに近いグループによって行なわれており,直接・間接に暴力団の資金源となっていることが多い。I-29表 風俗犯検察庁新規受理人員(昭和38〜42年) 次に,外国人関係犯罪の検察庁新規受理人員の推移をみると,I-30表のとおりである。外国人登録法違反は,昭和三九年に減少し,昭和四〇年以降は,逆に,漸増の傾向にあったが,昭和四二年は,前年に比べ,大幅に減少している。出入国管理令違反は,昭和四〇年までは,増加の傾向にあり,昭和四一年は,激減したが,昭和四二年は,やや増加した。I-30表 外国人関係犯罪新規受理人員(昭和38〜42年) |