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 昭和42年版 犯罪白書 第三編/第一章/二/6 

6 再犯少年の特質

 少年が,一度ならず,再度または数度にわたって犯罪を繰り返すことは,決してまれではない。これらいわゆる累犯少年は,犯罪少年の中でも,処遇が困難な者が多いとされている。少年の非行は,初期のうちに矯正することが望ましいが,不幸にして再犯に陥った少年について,その再犯の原因を解明して,犯罪少年の累犯化を防止するとともに,かれらを健全な社会人として再出発させることが,きわめて肝要であることは言うまでもない。そこで,以下,再犯少年の動向,特質などについて考察することとしたい。なお,この項では,前に,刑事処分を受けた者のほか,家庭裁判所でなんらかの決定(保護処分,不開始,不処分など)を受けたことのある者をも,再犯少年として取り上げることとする。III-42表は,一般保護少年について,前回処分の有無別に,昭和三〇年,三五年,三九年および四〇年の推移を示したものであるが,これによると,前に家庭裁判所で処分を受けたことのある者は,昭和三〇年には,四〇,〇九七人であったが,三五年に五四,九七四人となり,その後やや減少して,四〇年には,四七,九三六人となっている。一般保護少年中に占める割合をみても,人員の推移と同様の傾向にあるが,昭和三〇年に比べると,四〇年には,実人員が増加しているにもかかわらず,構成割合は,減少している。これは,一般保護少年の総数が,一〇年間に二倍近くなっているためである。つぎに,III-43表によって,主要罪種別に再犯少年の現状をみると,昭和四〇年について,再犯少年が実数の上で最も多いのは,窃盗で,二〇,一五四人であり,恐かつ,傷害などがこれについでいる。構成割合では,四〇%以上を再犯少年が占めているのは,詐欺,強盗,恐かつ,脅迫および殺人であって,これらの罪種が再犯少年になじみやすいものであることを示している。

III-42表 一般保護少年の前回処分の有無(昭和30,35,39,40年)

III-43表 一般保護少年の前回処分の有無と罪名(昭和40年)

 つぎに,法務省特別調査によって,再犯少年の二,三の特質について考察しよう。III-44表は,前に家庭裁判所または刑事裁判所でなんらかの処分を受けたことのある再犯少年の本犯時年令を示し,そうでない少年と比べたものであるが,これによると,一六歳ないし一九歳の年令層の者の割合が高く,とくに,一八歳では三六・一%,一九歳では三九・九%の者が再犯少年である。その再犯期間をIII-45表でみると,最も多いのは,六か月以上一年未満で,二三・八%であり,ついで,三か月以上六か月未満が一七・五%となっていて,再犯少年の四一・三%は,これらの期間内に,再犯を犯したこととなる。再犯までの期間が二年以上という者も,一三・五%みられる。

III-44表 前回処分の有無と本犯時年令

III-45表 前回処分と再犯期間

 再犯少年の多くは,かなり年少の時期から,非行性が発現し,警察で補導された経験があるのであって,III-46表によれば,かれらのうち二八・四%の者は,一四歳未満に補導された経験を持っている。さらに,III-47表は,補導を受けた回数を示しているが,処分歴のある者の方が,明らかに補導を受けた経験が多い。

III-46表 前回処分の有無と最初の補導年令

III-47表 前回処分の有無と補導回数

 以上みてきたように,再犯少年は非行性も早期に発現し,補導経験も多く,かつ,行為もかなり悪質化している。このような少年に対しては,現行の保護を主とする体制の下では,必ずしも十分な効果があがらないのではないかと危ぐされるのであり,年令の進んだ悪質少年に対しては,より適切な効果的処遇を考慮する必要があると思われる。ちなみに,司法統計年報によって,昭和四〇年の一般保護少年のうち,前回処分ある者四七,九三六人について,本件の終局決定をみると,検察官送致九・六%,保護処分三〇・五%,(保護観察一八・一%,少年院送致一二・三%,その他)不開始三一・五%,不処分二八・一%となっており,不処分,不開始など,軽微な処分で終わっている者が,全体の六〇%近くを占めている。