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 昭和42年版 犯罪白書 第二編/第三章/四/3 

3 更生保護会

 前に触れたように,更生保護会は,更生緊急保護法に基づき,法務大臣の認可を受けて,更生保護事業を営むものであって,保護観察中の者はもとより,更生緊急保護の対象者を,保護観察所長からの委託により,もしくは,委託によらず自ら任意に受け入れて,保護し,本人が罪を犯すことのない健全な国民として,すみやかに更生できるよう,あらゆる面で補導し,援助を与えている民間団体である。
 その数は,昭和四二年三月末現在で,一五一団体,一五三施設(二団体が各二施設併営)ある。そのうち,一四〇団体が財団法人,五団体が社団法人,残り六団体が法人格を有しない団体であるが,現に,実働しているのは,一三〇団体,一三一施設である。
 これらの施設は,男女の一方だけを収容するもの,双方を収容するものの区別があり,さらに,その中で,成人または青少年の一方だけを扱うものと,双方ともに扱うものとに分かれ,保護観察所長および地方更生保護委員会を中間監督機関として法務大臣の監督を受けている。その種別ごとの施設数ならびにそれぞれの収容定員を示せば,II-128表のとおりである。

II-128表 更生保護会の種類別保護施設と収容定員数(昭和42年3月31日現在)

 これらの更生保護会が昭和四一年中に保護観察所長からの委託を受けて保護した実人員は,II-129表のとおり,保護観察中の者の救護,援護の対象者五,八一四人と更生緊急保護の対象者七,三四七人の計一三,一六一人であるが,これを仮出獄者についてみると,同年中に新たに保護を委託された者は,四,〇八八人で,その年の仮出獄者一八,九五三人の二〇%以上を占めている。また,このほかに,委託保護の対象ではあるが,現に委託を受けなかった者や,すでに保護の法定期間を経過して委託を受けられない者で,保護を継続する必要が認められる者等に対しては,更生保護会は,任意保護の手を差し伸べており,その数は,昭和四〇年で三,三八二人に達している(保護統計年報による。)。

II-129表 更生保護会委託による救護・援護および更生緊急保護の実施人員(昭和41年)

 そして,これら保護された者は,法務省保護局の調査によれば,その八〇%以上が一五日以内に就職している。また,一年間に更生保護会を退会する者のうち,約半数の者(昭和四〇年では四八・二%)が一月以内に,九〇%以上の者(昭和四〇年では九二・一%)が半年以内に退会している。この退会の事情について,同じく法務省保護局調査によってみれば,昭和四〇年で,退会者の一九・七%が無断で,三・一%が再犯により退会しているが,三八・七%が住込み就職その他安定した職を得て自立しており,二四・七%は親族,縁故者のもとに円満に帰住している。このように,更生保護会が,多くの犯罪前歴者に保護の手を差し伸べ,相当の実績を収めていることは,注目に値する。
 しかも,これら更生保護会に保護されている者の多くが,窃盗犯で,知能が低く,すでに,刑務所にも数回はいって,年令も相当高く,いわば,窃盗の常習累犯者に類する者で,面会に来たり,たよりをよこしてくれる者もなく,親子,兄弟,親類,縁者等からも見離され,適当な帰住先もない者で,正常な社会生活に復帰することのきわめて困難な事情の下にある人達であり,そのうえ,保護観察を全く受けない満期釈放者や保護観察期間の短い仮釈放者がきわめて多く,いわば社会生活に適応することを困難ならしめている幾多の負因を持った処遇困難者で,再犯の危険性の強い者であるだけに,更生保護会の労苦は大きく,その活動は,高く評価され,再犯の防止,ひいては国民の福祉増進のため,少なからぬ貢献をしているものといえる。
 しかし,更生保護会が,その機能をさらに発揮し,いっそう適切な保護措置を実施し,処遇の効果をあげるためには,なお検討を加えなければならない問題も少なくない。