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2 更生緊急保護の実施 (一) 実施の方法 更生緊急保護は,これが適正に行なわれて,再犯防止に役だつことを意図しているが,裁判の執行として行なわれるのではないので,その措置は,あくまでも,本人からの申出を前提とした任意のものである。しかも,保護観察所長がその必要を認め,また,本人が法律を守る善良な社会人となる意思を有し,かつ,その努力をする者である場合に限り,本人の意思に反しない限りで,その者に最もふさわしい方法により,その改善,更生に必要かつ相当な限度で,保護観察所長が,自ら,または,更生保護会に委託して行なう。そして,この場合も,まず,本人の親族,縁故者等からの援助もしくは公共の衛生福祉その他の施設からの保護を受けることに努め,それができない場合,または,これらの援助もしくは保護のみによっては更生できないと認められる場合に,初めて国の責任において行なうのである。したがって,保護の申出があっても,右の諸条件に照らし,保護観察所長がその必要を認めない場合も当然あるわけで,その数は,きわめて少ないが,昭和四一年では,後述のII-126表にみるとおり,一四,八一八人中五三人が,その必要はないとされた者である。
II-126表 更生緊急保護事件の受理および処理人員(昭和41年) なお,その実施は,刑事上の手続による身体の拘束を解かれた後,六月をこえない範囲内で行なうことになっている。更生緊急保護法が,本人の更生のための応急的措置であるというたてまえをとっているので,このような一定期間内に限られることは当然といえよう。しかし,対象者によっては,六月では十分でない場合があり,現に,昭和四〇年に更生保護会が,保護観察所からの委託によらず,自ら,任意に更生緊急保護の対象者に対して実施した食事付宿泊の措置延べ人員中の約八五%,宿泊措置延べ人員中の約八七%が六月の法定保護期間を経過した者であることなどから(保護局調査による。),この六月を,必要によっては,さらに,六か月延長できるような弾力性のある期間の定め方にすることが望ましいとする意見がある。(二) 実施の内容と実施状況 更生緊急保護の措置には,保護観察所が自ら行なうもの(以下,「自庁保護」という。)と更生保護会に委託して行なうもの(以下,「委託保護」という。)とがあるが,自庁保護のおもなものは,帰住のあっせん(旅客運賃割引証の交付,旅費の支給等),一時の食事給与,衣料給与,医療や就職に関する援助等のいわゆる一時保護であり,委託保護としては,宿泊の供与,食事付宿泊の供与およびこれに伴う補導等のいわゆる継続保護である。
昭和四一年に更生緊急保護の措置の申出を保護観察所が受理し,処理した人員は,II-126表のとおり,いずれも,一四,八一八人であるが,これを種別でみると,刑の執行終了が八一・四%の一二,〇六九人で,その大部分を占めている。また,受理人員のうち,保護の措置を執る決定のあった者が一四,七六五人で,うち,自庁保護だけの者が八,四一〇人(五七・〇%),委託保護だけの者が四,七八四人(三二・四%),自庁と委託の両措置を執る決定のあった者が一,五七一人(一〇・六%)となっている。そして,この決定のあった者について,それぞれ,自庁保護と委託保護の措置が行なわれる。その実施状況は,自庁保護においては,II-127表のとおり,八,四一〇人と一,五七一人の計九,九八一人に対し,旅費の支給,旅客運賃割引証の交付および車中の食事給与等帰住援助関係の保護措置が多く行なわれている。委託保護については,次の「3更生保護会」の項でのべることにする。 II-127表 自庁による更生緊急保護の実施人員(昭和41年) |