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 昭和42年版 犯罪白書 第二編/第三章/四/1 

四 更生緊急保護

1 概況

(一) 更生緊急保護の意義

 犯罪前歴のある者は,種々の犯罪に陥りやすい素質を有するものが多いばかりでなく,世間からも疎外されがちで,社会生活に順応していくことの困難な諸条件下にあり,再犯の危険性を多分に蔵しているとみられる。
 そこで,国は,これら犯罪前歴者の再犯防止と改善,更生を図るために,保護観察対象者については,保護観察を実施し,その他の者については,一定の条件にあたる場合に,必要に応じて保護措置を講じることにしている。この後者がここでいう更生緊急保護であって,国は,犯罪前歴者が,親族,縁故者等からの援助もしくは公共の衛生福祉その他の施設からの保護を受けることのできない場合,または,これらの援助もしくは保護のみによっては更生できないと認められる場合に,国の責任において,これに対し,一時保護または継続保護を行ない,本人が進んで法律を守る善良な社会人となることを援護して,そのすみやかな更生を図ることに努めている。

(二) 更生緊急保護の対象とその実施機関

 この更生緊急保護の対象者には,次の六種類がある。
イ 懲役,禁こまたは拘留につき刑の執行を終わった者
ロ 懲役,禁こまたは拘留につき刑の執行の免除を得た者
ハ 懲役または禁こにつき刑の執行猶予の言渡しを受け,その裁判が確定するまでの者
ニ 懲役または禁こにつき刑の執行猶予の言渡しを受け,保護観察に付されなかった者
ホ 訴追を必要としないため公訴を提起しない処分を受けた者
ヘ 婦人補導院から退院した者および補導処分の執行を受け終わった者
 このように,その対象者は,犯罪前歴者の大部分に及んでいるが,たお,労役場から釈放された者,少年院送致処分の執行を終わった者,罰金や科料の刑の確定者等は,その対象から除外されている。これに対し,これらの中にも現実に保護を必要とする者がいることから,実務家の中には,これらの者も,その対象に含めるようにすベきであるとの意見がある。
 これら対象者に対して,更生緊急保護を実施する機関は,保護観察所である。保護観察所は,みずから,または,地方公共団体もしくは更生保護事業を営む団体に委託してこれを行なう。更生保護事業を営む団体は,さらに,その行なう事業の種類により,更生保護を行なう団体(以下「更生保護会」という。)と,その指導,連絡または助成をする団体の二つに分かれる。その団体数は,昭和四二年三月末現在で,前者が一五一,後者が五七である。
 なお,この事業が,国の施策にかかわる重要なものであるところから,国以外の団体で,更生保護事業を営もうとするときは,地方公共団体にあっては,あらかじめ,一定の事項を法務大臣へ届け出るべきものとされており,その他の団体にあっては,法務大臣の認可を受けることが必要とされている。もっとも,現在,地方公共団体で,この種事業を営むものは一つもないが,犯罪が地域住民の福祉と深く関連するものであることを思えば,将来,地方公共団体においても,この種事業を営み,積極的に国の行なう更生緊急保護に協力することが望まれる。