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3 裁判の執行 (一) 死刑の執行 死刑の言渡しを受けた者は,その執行に至るまで,拘置所または刑務所に拘置され,原則として,判決確定の日から六か月以内に,法務大臣の命令によって執行されることになっている。しかし,上訴権回復請求,再審請求,非常上告または恩赦の出願もしくは申立てがなされたとき,および共同被告人の事件が係属中であるときは,これらの手続が終了するまでの期間は,この六か月の期間に算入されないとされ,さらに,死刑囚が心神喪失または妊娠中であるときは,その状態がなくなるまで,刑の執行は停止される。死刑の執行は,絞首して行なわれる。ところで,わが国における死刑は,ごく限られた罪種について,慎重審理のうえ,言い渡されることはもちろんであるが,死刑の判決が確定したのちも,再審などの請求,恩赦の出願または執行停止の事由の有無等をきわめて慎重に審議検討したうえで執行されるので,通常,確定から執行までには相当な期間を経過している。
昭和三七年から昭和四一年までの五年間に死刑を執行された人員は,四六人であるが,これを罪名別にみると,強盗殺人が三五人で,総数の七六・一%を占め,一般の殺人が,それについで八人(総数の一七・四%)となっている。そのほかは,殺人・強かん致死が二人,殺人・爆発物取締罰則違反が一人となっている。 (二) 自由刑の執行 懲役は,刑務所に拘置して定役に服させ,禁錮は,刑務所に拘置し,拘留は,拘留場に拘置して執行する。自由刑の執行を受けている者が,心神喪失の状態にあるときは,その状態が回復するまで,刑の執行を停止することになっており,刑の執行によって,著しく健康を害するなどの事由があるときは,その刑の執行を停止することができることになっている。なお,この刑の執行を指揮するのは,検察官である。
昭和三六年から昭和四〇年までの五年間における自由刑の執行指揮の状況をみると,II-37表のとおりであるが,禁錮刑の執行指揮人員が漸増の傾向にあり,昭和四〇年では,昭和三六年の約二・八倍になっている。これは,自動車事故による業務上過失致死傷事件の増加に伴う禁錮刑の実刑の増加に起因するものと思われる。 II-37表 自由刑の執行人員(昭和36〜40年) (三) 財産刑の執行 わが国の財産刑には,罰金と科料とがあり,罰金は千円以上,科料は五円以上千円未満と定められている。財産刑の裁判も,自由刑と同じく,検察官の指揮または命令によって執行する。最近五年間のうち,昭和三六年,同三八年および同四〇年の各年度(会計年度)の調定件数および調定金額をみると,II-38表(1)・(2)のとおりである。(調定とは,徴収金原票を作成することをいう。本来,調定とは,歳入徴収官が徴収すべき金額を調査決定することをいうのであるが,徴収金についても,検察官が徴収金原票に登載された徴収すべき金額を確認して執行指揮印を押印するなど,歳入徴収官のそれと近似していることから,調定と呼ばれている。)これによると,罰金は,件数も金額も,急激な上昇を示し,昭和四〇年度には,二七六億余円に上っているが,科料は,昭和四〇年度において大幅な減少をみせている。
II-38表 つぎに,昭和四〇年度における罰金および科料の徴収状況についてみると,II-39表のとおりで,罰金の未済率は三・八%,科料の未済率は四・五%である。なお,罰金調定件数の〇・三%および科料調定件数の一・五%が徴収不能決定となっているが,これは,主として,罰金および科料の刑が確定した者が所在不明で,刑の時効が完成したことによるものと思われる。II-39表 罰金および科料の徴収状況(昭和40年度) |