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 昭和42年版 犯罪白書 第一編/第六章 

第六章 精神障害者の犯罪

 精神障害者の犯罪は,決して新しい問題ではないが,最近のように,精神障害者の犯罪が次々と発生し,しかも,それらの事件がニュースとしてマスコミに大きくとり上げられると,一般市民に恐怖と不安を与え,危険な精神障害者の野放しの問題は,一つの大きな社会問題として論議されるようになっている。たとえば,精神病患者による猟銃乱射事件,集団殺人や尊属殺人,精神薄弱者による連続放火,列車妨害など,あるいは,わが子を殺してしまった「育児ノイローゼ」の若い母親,誘かい常習犯の精神薄弱者や精神病質者など,比較的最近に起こったいわゆる精神障害者の事件は,かなりの数に上るようである。また,このように,新聞紙上を賑わす事件にまでは至らなくても,家庭生活や地域社会の生活を乱すような行為のある精神障害者の事例は,日常生活の中で,ときに見受けられるようである。
 このような精神障害者の犯罪や非行がどのくらいの数に上っているか,普通の犯罪に比較してどのような特徴があるか,そしてまた,それがどのように扱われ,処理されているかの実態については,必ずしも,まだ,十分に明らかにされてはいないが,いまや,犯罪対策を含めて,精神障害者対策の問題は,その重要性を一般に認識されてきた感がある。以下この章においては,精神障害の意義および種類について簡単に説明し,わが国における精神障害者および精神障害者の犯罪の実情などについて,資料の得られる範囲で,検討してみたい。