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 昭和42年版 犯罪白書 第一編/第五章/二 

二 公務員犯罪の処理

 検察庁における公務員犯罪の処理状況を,最近五か年間にわたってみると,I-73表のとおりである。

I-73表 公務員犯罪主要罪名別検察庁起訴・不起訴人員(昭和37〜41年)

 各罪名別に,その処理状況をみると,職権濫用の起訴率がきわめて低いことが注目される。I-74表は,昭和四一年に終局処理をみた公務員犯罪の中で,不起訴処分となった人員の内訳を示すものであるが,職権濫用については,八二九人のうち,犯罪の嫌疑を認めながら,犯罪の軽重や情状などを考慮して起訴猶予としたものが,わずか一四人にすぎない。この種の事件の大部分は,さきに述べたような,警察,検察庁,裁判所,矯正施設などの職員に対する告訴,告発事件であって,もともと,犯罪の嫌疑がないか,不十分なものが多いためである。

I-74表 公務員犯罪の不起訴処分の内訳比較(昭和41年)

 収賄については,後に触れることとして,窃盗,詐欺,横領,偽造の起訴率も,あまり高くない。しかし,この種の公務員犯罪は,犯人がおおむね初犯者で,被害も回復されている事例が多く,窃盗については,下級公務員の軽微な事犯が多く,詐欺,横領,偽造については,I-74表にみるごとく,犯罪の嫌疑が十分でない事件が少なくない事情を考慮すると,むしろ,比較的きびしい処理がなされているというべきであろう。
 その他の犯罪というのは,主として,人身事故事犯や粗暴犯であって,起訴率は,最近,五割をこえるに至っているが,その大部分は,略式命令請求である。昭和三七年の起訴率が異常に低いのは,さきに述べたとおり,いわゆる六・一五事件に関連した警察官に対する多数の告訴・告発事件が含まれているためである。