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公務員による犯罪には,公務員の職務に関して行なわれるもの(たとえば収賄)と,その職務に関係なく行なわれるものとがある。ここでは,この両者を含めた,公務員により行なわれるすべての犯罪について述べることとする。I-71表とI-21図は,戦後の公務員犯罪の概況をみるため,昭和二二年以降の警察における検挙人員を,刑法犯と特別法犯とに分けて示したものであり,集計の方法が改訂されたため,昭和四〇年以降の数字が不明であるが,戦後のおおよその傾向を知ることができる。
I-71表 公務員犯罪検挙人員(昭和22〜39年) I-21図 公務員検挙人員比較(昭和22〜39年) これによると,公務員犯罪は,戦後急増して,昭和二四年には,検挙人員三万人をこえるに至ったが,その後,漸減した。ところが,昭和二九年から再び増勢を示し,その間に多少の波はあるものの,おおむね,増加の一途をたどっていることが明らかである。しかし,昭和二四年の増加は,主として刑法犯の激増によったものであるのに対し,昭和二九年以後の増加は,特別法犯の増加に比例しており,主として道路交通法に違反する公務員の増加したことを物語るものと考えられる。つぎに,検察庁に新たに受理された公務員犯罪を,罪名別に集計したのが,I-72表である。この統計には,さきに掲げた警察庁の統計と違って,道路交通法違反は含まず,また,公社や公団の職員のような,いわゆる「みなす公務員」による犯罪も含まれていない。 I-72表 公務員犯罪主要罪名別検察庁新規受理人員(昭和37〜41年) この表において,昭和三七年の新規受理人員がきわめて多いことに気付くが,これは,いわゆる六・一五国会周辺デモ事件に関連して,警察官に対する殺人等の告訴・告発事件が多数立件されたことによるものである。つぎに,各罪名についてみると,職権濫用が昭和四〇年から四一年にかけて倍増しているのが注目される。これは,同年に,自己の処遇に関係のある公務員を,相次いで告訴した受刑者があったことなどの理由に基づくものと考えられ,後に述べるとおり,同罪については,犯罪の嫌疑の乏しい告訴事件が少なくないことに留意する必要がある。つぎに,収賄罪は,昭和三七,八年に比較して,同三九年以降の増加に著しいものがある。これに反して,窃盗,詐欺,横領は,全体として減少傾向にあり,偽造は,横ばいといってよい。「その他」というのは,人の身体に対する犯罪や,道交法違反を除く特別法犯を主体とするものであるが,漸増の傾向にある。これは,自動車の普及に伴って,業務上過失致死傷罪が増加したことによるものであろう。結局,以上の各罪種を合計した公務員犯罪全体は,昭和四〇年以来,漸増の傾向にあり,増加の原因としては,公務員の職務に関して行なわれる犯罪や交通事故事件の増加が,財産犯の減少を上回るものがあったことによるものである。 |