最近五年間における有期懲役刑の新受刑者について，罪名別に累犯者をみると，I-56表のとおりである。これによると，累犯者の占める比率が高いものは，刑法犯では，住居侵入(七七・一％)，窃盗(六五・五％)，賍物関係(六四・七％)，暴力行為等処罰に関する法律違反(六二・四％)，詐欺(五九・〇％)，恐かつ(五一・九％)，傷害(五〇・六％)であって，これらは，累犯者が半数をこえている。特別法犯では，売春防止法違反が六七・三％，麻薬取締法違反が五七・八％，銃砲刀剣類所持等取締法違反が五七・二％，覚せい剤取締法違反五六・七％で，これらの犯罪は，累犯者の占める比率が高い。

I-56表　罪名別新受刑者のうち累犯者の占める人員と率等(昭和37〜41年累計)

　これを新受刑者のうち，刑務所への入所度数三回以上のものについてみると，刑法犯では，住居侵入(六二・八％)，賍物関係(四九・三％)，窃盗(四八・八％)，詐欺(四六・七％)が高率を示し，特別法犯では，売春防止法違反(四三・九％)，覚せい剤取締法違反(三九・七％)，麻薬取締法違反(三八・三％)が高率を示している。これらの点からみると，累犯または常習犯的傾向が顕著な罪種は，刑法犯では，窃盗その他の財産犯，特別法犯では，売春および麻薬・覚せい剤関係の犯罪であるといえよう。
　もっとも，右の統計は，同一人によって特定の犯罪が繰り返されたということを示すものではない。そこで，同一人によって，どのような犯罪が繰り返されているかをみるために，再入受刑者について，前刑の罪名と再入刑の罪名とが同一のものがどの程度あるかをみると，I-57表のとおりである。この表によると，昭和三六年から昭和四〇年までの平均では，罪名の一致度の比率の高いものは，窃盗の八二・八％，詐欺の五五・四％，傷害の三六・九％，恐かつの二九・三％である。また，右の平均において，従来の昭和二六〜三〇年，三一〜三五年の各平均より一致度の高くなったものに，詐欺，恐かつ，傷害，放火がある。以上のことから，財産犯とくに窃盗および詐欺ならびに傷害，恐かつなどの暴力犯罪が常習化しやすいということができるように思われる。

I-57表　再入受刑者の再入刑罪名と前刑罪名との関係(同一罪名の割合)