女子の犯罪者は，男子の犯罪者に比較して，寛大に取り扱われる場合が多いために，施設収容に至るまでの女子犯罪者は，きわめて少ない。女子犯罪は，その量よりもむしろ質が問題とされなければならない。
　I-44表は，昭和三五年および四〇年における刑法犯通常第一審有罪人員を，主要罪種別に示したものである。これでみると，男子一〇〇に対する女子の割合は，えい児殺，尊属殺人，殺人，放火，公然わいせつなどにおいて比較的高く，これに反して，強盗，暴行，傷害，脅迫，恐かつなどの暴力的犯罪において著しく低い。女子の身体的特徴からみても，暴力的犯罪の少ないことはうなずけるが，これと同様に，女子の身体的，生理的特性による犯罪としてえい児殺の割合がとくに高いのであろう。女子に比較的多い罪種として殺人があげられるが，これは薬物の使用により，また睡眠中を利用するなどの犯行手段を使用できるからであろう。また，放火犯も，女子に比較的多いが，その動機は，男子の場合と異なり，利欲によるよりは，恨みやねたみなどによる場合が多いといえよう。

I-44表　男女別刑法犯通常第一審主要罪名別有罪人員(昭和35,40年)