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令和7年版 犯罪白書 第7編/第6章/第4節/3

3 刑事司法の各段階における犯罪被害者等施策の活用・充実のための方策
(1)司法面接的手法を用いた代表者聴取について

司法面接的手法を用いた代表者聴取は、出来事の記憶や自らの気持ちを言葉で伝えることが苦手な供述弱者と呼ばれることもある精神障害を有する者や児童から、その負担を最小限に抑えつつ、性犯罪等の被害に関する供述を聴取するための優れた技法であり、精神障害を有する性犯罪被害者等の個々の事情に配慮した被害者支援の取組の一つである。そして、司法面接的手法による代表者聴取は、余罪を含む性犯罪等の被害の解明に資するものであり、被害者保護、加害者に対する相応の処分及び相応の科刑の実現にも資するものである。

また、代表者聴取は、性犯罪の被害者等が自らの被害を周囲の者や捜査機関等に打ち明けたことをきっかけとして開始されることから、潜在化している犯罪の被害自体を顕在化させるための直接的な方策とはいえないが、司法面接的手法により被害者の特性を踏まえた事情聴取を実施することで、被害の有無や余罪を含む被害の詳細・全体像等が判明すれば、被害者等からの被害申告をより適切に取り扱うことができることから、この意味において、被害の顕在化に効果的に機能する大変有益な取組であるといえる。したがって、今後も司法面接的手法を用いた代表者聴取が積極的に活用されるべきである。

検察官を含めた捜査機関は、司法面接的手法を身に付けるための専門家による講義やロールプレイ、ピアレビュー等の実践的な研修を重ねていくことが重要である。また、捜査機関は、このような研修等を重ねて司法面接的手法を身に付けた者が、実際の現場で性犯罪等の被害を受けた被害者の聴取に当たっていることを、被害者の支援関係者等に対し広く周知し、被害者の支援関係者等が、被害者から最初に被害を伝えられた場合に、安心して早期に捜査機関へ通報してもらえるように努める必要がある。

(2)聴取・伝達制度について

本章第2節4項で述べたとおり、矯正段階及び更生保護段階における聴取・伝達制度は、いずれも被害者等の心情等を尊重した被害者支援としての側面もある。もっとも、被害者等が、被害に関する心情や自らが置かれている状況等を口頭や書面で表現することは決して容易なことではなく、現状、精神障害を有しない被害者等であっても、聴取・伝達制度を利用するハードルは高いと考えられる。

この点、精神障害を有する性犯罪被害者は、自らの被害に関して明確な認識を持ち得ていなかったという特別調査<2>の結果も踏まえれば、そのハードルは一層高く、被害者としての心情等を明らかにしたいと考えた場合でも、一人でこれを実現することにはおのずから困難や限界がある。したがって、精神障害を有する被害者等にとっても、聴取・伝達制度を利用しやすいものにすべきである。具体的には、更生保護における相談・支援制度により保護観察所の被害者担当官等から付添いや書面作成の援助を受けることができることや、聴取・伝達制度全般において、被害者等からの希望があれば、親族、弁護士又は被害者支援関係者等の同席を認めることができることなど、法務省では、精神障害を有する被害者等においても、聴取・伝達制度がより利用しやすくなるための工夫等に既に取り組んでいることから、これらの取組を一層推進しつつ、これらの取組について広く情報提供する必要がある。

また、精神障害の有無にかかわらず、被害者等に対して聴取・伝達制度の説明を行う際は、被害者等の心情等が時間の経過等と共に大きく変化するものであることに特に留意し、被害者等が必要とするタイミングで都度、制度の説明等を行うように心掛けることが重要である。