前記2で紹介した司法面接的手法を用いた代表者聴取の取組は、児童が被害者又は参考人である事件において行われてきたものであるが、検察・警察では、政府による性犯罪・性暴力対策の強化の方針を踏まえ、性犯罪被害者に対する事情聴取の在り方をその供述の特性や心情等により配慮したものとするため、令和3年4月から、知的障害等の精神に障害を有する被害者に係る性犯罪事件においても、司法面接的手法を用いた代表者聴取を試行している。この試行の対象となる精神に障害を有する性犯罪被害者については、18歳未満の者と18歳以上の者の双方を含み、当該事件の内容、証拠関係、被害者の障害の程度等を考慮し、その負担軽減及び供述の信用性確保の観点から、代表者聴取を行うことが相当であると認められる事件について、司法面接的手法を用いた代表者聴取を行っている。同月当時は、東京地方検察庁等の一部の試行庁(13庁)でこの試行を実施してきたところ、4年7月からは、試行庁が全ての地方検察庁に拡大されている。
令和5年度における精神に障害を有する性犯罪被害者を対象とする代表者聴取の実施状況について、被害者の年齢別の実施件数及び障害種別の該当率(重複計上による。)をそれぞれ見ると、7-3-1-4図のとおりである。なお、同図<2>の障害種別において、「精神障害」は知的障害及び発達障害以外の精神障害をいう。年齢別では、13歳から17歳までは、30件台後半から40件台前半で他の年齢より多く、次いで、9歳から12歳までは、おおむね20件台であった。また、40歳代では13人、50歳代では8人、60歳以上では4人に対して実施されていた。一方、障害種別では、60%弱が知的障害、35.6%が発達障害、20%弱が精神障害に該当した。なお、被害者が複数の障害を有することがあることから、各障害種別の該当率は重複計上によることに留意が必要である。
なお、代表者聴取は、児童又は精神に障害を有する性犯罪事件の被害者のいずれに対して行われる場合も録音・録画を実施しており、その録音・録画記録媒体については、従来、公判では、いわゆる伝聞証拠として証拠能力が認められないのが原則であり、その聴取結果を法廷に顕出するためには、供述不能等の厳格な要件を満たさない限り、証人尋問で証言させざるを得ず、児童等の心理的・精神的負担の軽減を図る上で不十分であった。しかしながら、今般、刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律(令和5年法律第66号)により、一定の要件の下で、司法面接的手法を用いた聴取により得られた供述については公判に顕出することを可能とする新たな伝聞例外が創設された(第2編第1章1項(3)参照)。