拘禁刑導入後は、刑事施設の長は、拘禁刑受刑者及び拘留受刑者について、改善更生及び円滑な社会復帰を図るために必要な場合には作業を行わせる。作業は、受刑者の勤労意欲を高め、職業上有用な知識及び技能を習得させるように実施するものとされる。受刑者に作業を行わせるに当たっては、<1>処遇調査において受刑者個々の作業の必要性を判定し、<2>前記<1>で判定した必要性に応じた作業を指定し、<3>受刑者自身に作業の目的と目標を理解させる動機付けを行い、<4>目的とする能力等を身に付けさせる適切な作業を行わせ、指導を行う。作業の取組状況については評価を行い、必要に応じて、受刑者に対して評価結果を伝える。
令和6年度における受刑者(懲役受刑者並びに希望した禁錮受刑者及び旧拘留受刑者)の作業の一日平均就業人員は、2万5,456人であった。また、禁錮受刑者は、7年3月末現在で、82.4%が作業に従事していた(法務省矯正局の資料による。)。
拘禁刑導入以前は、受刑者は、作業として職業訓練を受けることがあるほか、生産作業(物品を製作する作業及び労務を提供する作業で、木工、印刷、洋裁、金属等の業種がある。)、社会貢献作業(労務を提供する作業であって、社会に貢献していることを受刑者が実感することにより、その改善更生及び円滑な社会復帰に資すると刑事施設の長が特に認める作業)及び自営作業(刑事施設における炊事、清掃、介助、建物の修繕等の作業)の中から、受刑者の希望も参酌し、適性に応じて作業を指定されていた。なお、令和6年度において社会貢献作業を実施した施設数及び対象受刑者数は、50庁、675人であった(法務省矯正局の資料による。)。
拘禁刑導入後の作業については、受刑者自らが作業の必要性を理解し、社会復帰までに必要な能力を身に付けることを目的として取り組む必要があることから、作業の目的及び効果が明らかとなるように名称が変更され、職業訓練(後記(3)参照)が継続されたほか、基礎的作業(釈放後に自立した社会生活を営む上で、就労する必要がある者に対し、その特性に応じて、職業生活を円滑に営むために必要となる職業上の基礎的な知識及び技能を身に付けさせる作業。自律性の度合い等によって3区分に分かれている。)及び機能別作業(改善更生及び円滑な社会復帰を図るため特定の機能及び能力の維持又は向上の必要がある者に対し、当該機能及び能力を維持又は向上させる作業)に整理された。機能別作業には、「コミュニケーション能力等向上作業」(出所後の就労、就労の定着のために必要なコミュニケーション能力、課題解決能力等の向上を図る。)、「機能向上作業(基礎的作業移行課程)」(作業療法士による定期的な助言及び指導を受けながら、認知機能及び身体機能の維持又は向上を図る。)、「機能向上作業(社会参画課程)」(福祉事務所その他の団体の支援を受けながら、農園芸その他の作業に従事させることにより、自信及び生きがいを感じさせるとともに、自己肯定感の向上を図り、円滑な社会参画を促す。)、「チーム参加・管理能力等養成作業」(事業における課題の設定、商品等の企画、製造及び販売その他の業務の体験を通じて、自立した社会人として、組織における他者との協働の方法、組織の運営に資する知識及び技能等の習得を図る。)等があり、「社会貢献作業」は、公益性の高いボランティア的作業を通じて、社会に貢献していることを実感することで、社会的な孤立感の解消と愛他精神や幸福感の育成を図る作業として、機能別作業に含まれた。
作業は、刑事施設内で行うものが大部分であるが、刑事施設が管理する構外作業場で行うものもある。さらに、開放的施設において処遇を受けていることなどの要件を満たす受刑者については、刑事施設の外の外部民間企業等の事業所の協力を得て、受刑者を職員の同行なしに、その事業所に通勤させて業務に従事させることもある(外部通勤作業)。令和7年3月末現在、外部通勤作業を実施しているのは、6庁9人であった(法務省矯正局の資料による。)。なお、前記の外出・外泊及び外部通勤作業の運用に当たっては、必要に応じ、GPS機器が活用されている。
作業の収入は、全て国庫に帰属する。令和6年度における作業による歳入額は、約24億5,000万円であった(法務省矯正局の資料による。)。他方、受刑者には、従事した作業に応じ、作業報奨金が原則として釈放時に支給される。作業報奨金に充てられる金額(予算額)は、7年度は一人1か月当たり平均で4,556円である(法務省矯正局の資料による。)。また、6年の出所受刑者が出所時に支給された作業報奨金の金額を見ると、5万円を超える者が36.7%、1万円以下の者が15.9%であった(矯正統計年報による。)。
刑事施設では、受刑者に職業に関する免許や資格を取得させ、又は職業上有用な知識や技能を習得させるために、職業訓練を実施している。拘禁刑の導入に伴い、雇用ニーズに応じた職業訓練を効果的に実施できるよう見直しを行い、従前の専門職業訓練及び標準職業訓練に加えて、就労準備職業訓練を新設した。就労準備職業訓練の内容は、復習的訓練(釈放3か月前の者を対象とした実施済訓練の復習)、職場体験訓練(就労内定先企業等における講義の受講、就労体験等)及び就労移行訓練(実際の就労に必要な知識・技能の習得を協力雇用主等と協力して行う訓練)である。
職業訓練のうち、専門職業訓練及び標準職業訓練の実施形態には、総合訓練、集合訓練及び自庁訓練の三つの方法がある。総合訓練は全国の刑事施設から、集合訓練は主に各矯正管区単位で、自庁訓練は刑事施設ごとに、それぞれ適格者を選定して実施している。総合訓練は、総合訓練施設として指定された7庁(山形、福井、山口及び松山の各刑務所並びに函館、川越及び佐賀の各少年刑務所)で、男性の受刑者に対して実施している。女性の受刑者に対する職業訓練は、集合訓練又は自庁訓練の形態で実施している。就労準備職業訓練の実施形態は自庁訓練のみである。
令和6年度に実施した職業訓練の種目は、同年度に新たに開講されたクリーンスタッフ養成科を含めて合計60種目であり、受講者が多い上位3種目は、ビジネススキル科(2,148人)、情報処理技術科(1,014人)、キャリアガイダンス科(591人)であった。同年度における職業訓練の修了者は、7,804人であり、危険物取扱者、介護職員研修、ボイラー技士等の資格又は免許を取得した者は、延べ6,536人であった。また、同年度に、職業訓練の一環として、内定を受けた事業所等において一定期間就労を体験させる職場体験を実施したのは33人であった(法務省矯正局の資料による。)。