これまでの人生において、処方薬・市販薬を本来の目的や方法から外れて使用した経験の有無について、男女別に見ると、7-5-3-3図のとおりである。総数、薬物事犯者のいずれも、女性受刑者は、男性受刑者と比べ、「あり」の構成比が高かった。また、薬物事犯者の女性受刑者では、総数の場合よりも「あり」の構成比が高かった。
これまでの人生において、自傷行為として、「わざと、刃物や鋭利なもので自分の身体を切ったこと」、「わざと、シャーペンやコンパスのような尖ったもので自分の身体を刺したこと」、「わざと、自分のこぶしで自分の身体や硬い壁を殴ったこと」、「わざと、自分の頭を壁にぶつけたこと」、「わざと、血が出るほどはげしく、自分の皮膚をかきむしったこと」、「わざと、内出血してしまうほど強く、自分の皮膚をつねったこと」、「わざと、自分の身体をかんだこと」及び「わざと、火のついたタバコを自分の皮膚に押しつけたり、ライターの火であぶったりするような、自分にやけどさせる行動をしたこと」の8項目いずれかの経験の有無について、男女別に見ると、7-5-3-4図のとおりである。総数では、女性受刑者及び男性受刑者のいずれも、全ての項目に「なし」と回答した者の構成比が約5割を占めたが、薬物事犯者の女性受刑者では、いずれかの項目で「あり(9回以下)」又は「あり(10回以上)」と回答した者の構成比が「なし」を上回った。項目別に「あり(9回以下)」又は「あり(10回以上)」と回答した者の構成比を見ると、総数、薬物事犯者のいずれも、女性受刑者は「わざと、刃物や鋭利なもので自分の身体を切ったこと」(総数29.6%、薬物事犯者41.4%)の構成比が最も高く、男性受刑者は「わざと、自分のこぶしで自分の身体や硬い壁を殴ったこと」(総数37.8%、薬物事犯者37.4%)の構成比が最も高かった。
配偶者(事実婚、別居中の夫婦及び元配偶者を含む。)や交際相手間での加害経験及び被害経験について、男女別に見ると、7-5-3-5図のとおりである。総数、薬物事犯者のいずれも、全ての項目で、女性受刑者は、男性受刑者と比べ、「加害・被害なし」の構成比が低く、「加害なし・被害あり」及び「加害・被害あり」の構成比が高かった。また、薬物事犯者の女性受刑者では、総数の場合よりも、全ての項目で「加害・被害なし」の構成比が低く、「加害なし・被害あり」及び「加害・被害あり」の構成比が高かった。とりわけ身体的暴行については、薬物事犯者の女性受刑者では、「加害・被害なし」は2割弱にとどまり、心理的攻撃の「加害・被害なし」も3割弱にとどまった。
なお、配偶者・交際相手からの暴力の被害経験の有無を男女別に見た7-2-6図の調査は、今回の特別調査の結果とは調査等の前提(例えば、今回の特別調査では、20歳以上の女性受刑者及び男性受刑者が対象となっているのに対し、7-2-6図の調査では、18歳以上59歳以下の男女が対象となっていること)に相違があることに留意する必要があるものの、同図を見ると、女性では、全ての項目で、被害経験が「まったくない」の構成比が8~9割程度であるという傾向が見られた。
18歳までの小児期逆境体験(Adverse Childhood Experiences。以下この編において「ACE」という。)の経験の有無(重複計上による。)について、各項目の該当率を男女別に見ると、7-5-3-6図のとおりである。総数では、女性受刑者と男性受刑者のいずれも「親が亡くなったり離婚したりした」、「家族から、心が傷つくような言葉を言われるといった精神的な暴力を受けた」、「家族から、殴る蹴るといった体の暴力を受けた」の3項目において、「あり」の該当率が30%を超えた。薬物事犯者の女性受刑者は、前記3項目に加え「母親(義理の母親も含む)が、父親(義理の父親や母親の恋人も含む)から、暴力を受けていた」の「あり」の該当率も30%を超えた。また、薬物事犯者の女性受刑者は、総数の場合及び薬物事犯者の男性受刑者よりも「あり」の該当率が総じて高い傾向が見られた。