受刑者の帰住予定地を管轄する保護観察所は、刑事施設から受刑者の身上調査書の送付を受けるなどした後、保護観察官又は保護司が引受人等と面接するなどして、帰住予定地の状況を確かめ、住居、就労先等の生活環境を整えて改善更生に適した環境作りを働き掛ける生活環境の調整を実施している。この結果は、仮釈放審理における資料となるほか、受刑者の社会復帰の基礎となる。
また、地方更生保護委員会は、保護観察所が行う生活環境の調整について、必要な指導・助言を行うほか、調整が複数の保護観察所において行われる場合には当該保護観察所相互間の連絡調整を行う。加えて、これらの指導、助言、連絡調整の措置をとるに当たって必要があると認めるときは、受刑者に対する調査を行うことが可能である。さらに、地方更生保護委員会は、保護観察付一部執行猶予者について、猶予期間に先立って仮釈放がない場合、実刑部分の執行から猶予期間中の保護観察へ円滑に移行できるよう、生活環境の調整の結果を踏まえて審理し(住居特定審理)、その者が居住すべき住居を釈放前に特定することができる。令和5年に住居特定審理を経て住居が特定された保護観察付一部執行猶予者は、96人(前年比24人減)であった(保護統計年報による。)。
令和5年に生活環境の調整を開始した受刑者の人員は、2万8,559人(前年比0.3%減)であり、このうち保護観察付一部執行猶予者の人員は、1,325人であった(保護統計年報による。)。
高齢者又は障害を有する者で、かつ、適当な帰住先がない受刑者等について、釈放後速やかに、必要な介護、医療、年金等の福祉サービスを受けることができるようにするための取組として、特別調整(本編第4章第3節4項(2)参照)を実施している。具体的には、福祉サービス等を受ける必要があると認められること、その者が支援を希望していることなどの特別調整の要件を全て満たす矯正施設の被収容者を矯正施設等及び保護観察所が選定し、各都道府県が設置する地域生活定着支援センター(厚生労働省の地域生活定着促進事業により設置)に保護観察所が依頼して、適当な帰住先の確保を含め、出所後の福祉サービス等について特別に調整を行っている。特別調整の終結人員(少年を含む。)の推移(最近10年間)は、2-5-2-4図のとおりである。令和5年度の特別調整の終結人員は、796人であった(CD-ROM参照)。
なお、保護観察付全部執行猶予の言渡しを受け、その裁判が確定するまでの者について、保護観察所において、保護観察を円滑に開始するために必要と認めるときは、その者の同意を得て、生活環境の調整を行っている。
また、令和5年12月に施行された更生保護法の一部改正(本章第1節1項参照)に伴い、勾留されている被疑者であって検察官が罪を犯したと認めたものについて、保護観察所は、捜査に支障を生ずるおそれがあり相当でない旨の意見を検察官が述べたときを除き、身体の拘束を解かれた場合の社会復帰を円滑にするため必要があると認めるときは、その者の同意を得て、生活環境の調整を行うことができることとなった。