保護観察は、保護観察対象者の再犯・再非行を防ぎ、その改善更生を図ることを目的として、その犯罪又は非行に結び付く要因及び改善更生に資する事項を的確に把握しつつ、その者に通常の社会生活を営ませながら、保護観察官と、法務大臣から委嘱を受けた民間のボランティアである保護司が協働して実施する(事案に応じて、複数の保護観察官又は保護司が担当する場合もある。)。保護観察官及び保護司は、面接等の方法により接触を保ち行状を把握することや、遵守事項及び生活行動指針を守るよう必要な指示等の措置をとるほか、被害者等の被害の回復又は軽減に誠実に努めるよう必要な指示等の措置をとるなどの指導監督を行い、また、自立した生活ができるように住居の確保や就職の援助等の補導援護を行う。
保護観察対象者は、<1>家庭裁判所の決定により保護観察に付されている者(保護観察処分少年)、<2>少年院からの仮退院を許されて保護観察に付されている者(少年院仮退院者)、<3>仮釈放を許されて保護観察に付されている者(仮釈放者)及び<4>刑の執行を猶予されて保護観察に付されている者(保護観察付全部執行猶予者及び保護観察付一部執行猶予者)の4種類である。
なお、令和4年法律第52号による売春防止法の改正により、令和6年4月1日に婦人補導院が廃止(本編第4章第1節参照)されたことに伴い、婦人補導院からの仮退院を許された者を保護観察対象者とする制度も廃止された。
保護観察対象者は、保護観察期間中、遵守事項を遵守しなければならず、これに違反した場合には、仮釈放の取消し等のいわゆる不良措置がとられることがある。遵守事項には、全ての保護観察対象者が守るべきものとして法律で規定されている一般遵守事項と、個々の保護観察対象者ごとに定められる特別遵守事項とがあり、特別遵守事項は、主として次の類型、すなわち、<1>犯罪又は非行に結び付くおそれのある特定の行動の禁止、<2>健全な生活態度を保持するための行動の実行又は継続、<3>指導監督を行うため事前に把握しておくことが特に重要と認められる生活上又は身分上の特定の事項についての保護観察官又は保護司への事前申告、<4>特定の犯罪的傾向を改善するための専門的処遇プログラムの受講(本節2項(3)参照)、<5>自立更生促進センター(本節2項(10)参照)に一定期間宿泊して指導監督を受けること、<6>社会貢献活動を一定の時間行うこと(本節2項(11)参照)、<7>更生保護事業を営む者等が行う特定の犯罪傾向を改善するための専門的な援助であって法務大臣が定める基準に適合するものの受講(本節2項(12)参照)等の中から、保護観察対象者の改善更生のために特に必要と認められる範囲内で具体的に定められる。また、保護観察対象者には、遵守事項のほか、改善更生に資する生活又は行動の指針となる生活行動指針が定められることがあり、遵守事項と共に、指導の基準とされる。