法務省は、受刑者等の出所時の就労の確保に向けて、厚生労働省と連携し、刑務所出所者等総合的就労支援対策を実施している。この施策は、刑事施設、少年院、保護観察所及びハローワークが連携する仕組みを構築した上で、支援対象者の希望や適性等に応じ、計画的に就労支援を行うものであるが、その一環として、刑事施設では、支援対象者に対し、ハローワークの職員による職業相談、職業紹介、職業講話等を実施している(保護観察所における就労支援については、本編第5章第3節2項(9)参照)。
また、刑務所出所者等の採用を希望する事業者が、矯正施設を指定した上でハローワークに求人票を提出することができる「受刑者等専用求人」が運用されており、事業者と就職を希望する受刑者とのマッチングの促進に努めている。
さらに、受刑者等の就労先を在所中に確保し、出所後速やかに就労に結び付けるため、全国8か所の全ての矯正管区に設置されている矯正就労支援情報センター室(通称「コレワーク」)が、受刑者等の帰住地や取得資格等の情報を一括管理し、出所者等の雇用を希望する企業の相談に対応して、企業のニーズに適合する者を収容する施設の情報を提供する(雇用情報提供サービス)などして、広域的な就労支援等に取り組んでいる。また、刑務所出所者等の雇用経験が豊富な事業主等を刑務所出所者等雇用支援アドバイザーとして招へいし、刑務所出所者等の雇用前後における事業主の不安や疑問等の相談に応じられる体制を整備するとともに、同アドバイザーによる事業主への相談会を実施(令和5年度は9回実施し、延べ30人参加)したほか、事業主等に対する就労支援セミナーを開催(同年度は27回開催し、延べ740人参加)した。
このほか、日本財団及び関西の企業7社が発足させた日本財団職親プロジェクトは、少年院出院者や刑務所出所者に就労先・住まいを提供することで、円滑な社会復帰を支援するとともに、再犯者率の低下の実現を目指しており、令和6年5月末現在で、410社が参加している(日本財団の資料による。)。
なお、刑事施設及び少年院においては、就労支援体制の充実のため、キャリアコンサルティング等の専門性を有する非常勤職員である就労支援スタッフを配置しているほか、キャリアコンサルタント等の資格を有する常勤職員である就労支援専門官を配置している。令和6年度の刑事施設における就労支援スタッフの配置施設数は75庁(刑務支所を含む。)、就労支援専門官の配置施設数は32庁(刑務支所を含む。)である。
法務省は、厚生労働省と連携して、高齢又は障害を有し、かつ、適当な帰住先がない受刑者及び少年院在院者について、釈放後速やかに、適切な介護、医療、年金等の福祉サービスを受けることができるようにするための取組として、矯正施設と保護観察所において特別調整を実施している(概要については、本編第5章第2節2項参照)。この取組では、福祉関係機関等との効果的な連携が求められるところ、その中心となるのは、厚生労働省の地域生活定着促進事業により整備が進められ、各都道府県が設置した地域生活定着支援センターであり、この取組によって司法と福祉との多機関連携による支援が行われている。
刑事施設においては、特別調整を始めとする福祉的支援を必要とする者に対応するため、社会福祉士又は精神保健福祉士の資格を有する非常勤職員を配置しているほか、福祉専門官(社会福祉士、 精神保健福祉士又は介護福祉士の資格を有する常勤職員)を配置している。令和6年度の社会福祉士の配置施設数は67庁、精神保健福祉士の配置施設数は8庁、福祉専門官の配置施設数は59庁(刑務支所を含む。)である。また、認知能力や身体機能の低下した高齢受刑者等に対し、専門的な知識・経験を有する者が介助を行うため、介護福祉士及び介護専門スタッフ(介護職員実務者研修又は介護職員初任者研修の修了者等)を配置している。同年度の配置施設数は、介護福祉士が8庁、介護専門スタッフが40庁である(法務省矯正局の資料による。)。
平成30年4月から、一部の刑事施設において、高齢又は障害のある受刑者に対して、刑事施設在所中に福祉施設等において福祉サービスの体験等を行わせることにより、出所後、必要に応じて福祉的な支援を受けながら、地域社会の一員として健全な社会生活を送るための動機付けを図り、出所後の円滑な地域定着を促してきたところ、令和5年4月からは全国の刑事施設にその対象を拡大している。
さらに、女性の受刑者を収容する刑事施設における医療・福祉等の問題に対処するため、これらの施設が所在する地域の医療・福祉等の各種団体の協力を得て、女子施設地域連携事業を行っている(第7編第4章第1節参照)。