平成29年6月、刑法の一部を改正する法律(平成29年法律第72号)が成立し、同年7月に施行された。同法により、<1>従来の強姦が強制性交等に改められ、被害者の性別を問わなくなり、かつ、性交(姦淫)に加えて肛門性交及び口腔性交をも対象とし、法定刑の下限が引き上げられ、<2>監護者わいせつ・監護者性交等が新設され、18歳未満の者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じたわいせつ行為や性交等が処罰されることとなり、また、<3>強姦、強制わいせつ等(同法による改正前の刑法176条、177条及び178条に規定する罪)は親告罪であったが、これらの罪は、改正時に、監護者わいせつ・監護者性交等と共に、非親告罪とされた。
さらに、令和5年6月、刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律(令和5年法律第66号)及び性的姿態撮影等処罰法(令和5年法律第67号)が成立した。前記令和5年法律第66号により、強制わいせつ及び準強制わいせつ並びに強制性交等及び準強制性交等をそれぞれ統合し、それらの構成要件を改めて不同意わいせつ及び不同意性交等とするとともに、13歳以上16歳未満の者に対して当該者が生まれた日より5年以上前の日に生まれた者がわいせつな行為又は性交等をした場合に不同意わいせつ又は不同意性交等により処罰することを可能としたほか、16歳未満の者に対する面会要求等を新設するなどの処罰規定の整備等が行われた(同年7月13日施行。第2編第1章1項(3)参照)。
不同意性交等(前記平成29年法律第72号による改正前は強姦(準強姦を含む。)をいい、同改正後、前記令和5年法律第66号による改正前は強制性交等(準強制性交等を含む。)、前記強姦及び監護者性交等をいい、同改正後は不同意性交等、前記強制性交等、前記強姦及び監護者性交等をいう。)の認知件数、検挙件数及び検挙率の推移(最近30年間)は、1-1-2-5図のとおりである。認知件数は、平成9年から増加傾向を示し、15年に2,472件を記録した後、23年まで減少し続け、24・25年にやや増加したものの、26年から再び減少し、28年は昭和57年以降で最少の989件であった。その後、平成29年からは増加傾向を示し、令和5年は2,711件(前年比1,056件(63.8%)増)であり、うち女性を被害者とするものは2,611件であった(6-1-3-1表参照)。なお、前記平成29年法律第72号による改正によって対象が拡大した点及び前記令和5年法律第66号による改正によって構成要件が変更となった点には留意する必要がある。検挙件数も、平成15年に1,569件を記録した後、減少傾向にあったが、29年から増加傾向にあり、令和5年は2,073件(同672件(48.0%)増)であった。検挙率は、平成10年から低下し、14年に62.3%と戦後最低を記録した後は上昇傾向にあり、27年から令和3年まで、いずれの年も90%台と高水準で推移していたが、5年は前年に引き続き低下し、76.5%(同8.2pt低下)であった。
このうち、令和5年における、前記令和5年法律第66号による改正後の不同意性交等に限った認知件数は1,237件、検挙件数は579件(検挙率は46.8%)であった。また、監護者性交等の認知件数は103件、検挙件数は102件(検挙率は99.0%)であった(警察庁刑事局の資料による。)。
不同意わいせつ(前記平成29年法律第72号による改正前は強制わいせつ(準強制わいせつを含む。)をいい、同改正後、前記令和5年法律第66号による改正前は前記強制わいせつ及び監護者わいせつをいい、同改正後は不同意わいせつ、前記強制わいせつ及び監護者わいせつをいう。)の認知件数、検挙件数及び検挙率の推移(最近30年間)は、1-1-2-6図のとおりである。認知件数は、平成の初期から増加傾向にあったが、平成11年から13年にかけて前年比25.8~38.6%の勢いで増加し続け、15年には昭和41年以降で最多の1万29件を記録した。その後、平成21年まで減少し、22年から25年までは増加傾向にあり、26年から令和2年まで減少し続けていたが、3年に増加に転じ、5年は6,096件(前年比1,388件(29.5%)増)であった。なお、前記平成29年法律第72号による改正によって対象が縮小(口腔性交及び肛門性交が強制性交等の対象行為となった。)及び拡大(監護者わいせつが新設された。)した点並びに前記令和5年法律第66号による改正によって構成要件が変更となった点には留意する必要がある。検挙件数は、平成5年から25年までは3,000件台、26年から30年までは4,000件台前半、令和元年から3年までは3,000件台後半でそれぞれ推移していたが、4年は4,000件を超え、5年は4,813件(同751件(18.5%)増)であった。検挙率は、平成11年に前年比18.9pt、12年に同14.8pt低下し、14年には35.5%と昭和41年以降で最低を記録したが、その後は上昇傾向にあったところ、令和5年は79.0%(同7.3pt低下)であった(CD-ROM参照)。
このうち、令和5年における、前記令和5年法律第66号による改正後の不同意わいせつに限った認知件数は2,733件、検挙件数は1,369件(検挙率は50.1%)であった。また、監護者わいせつの認知件数は121件、検挙件数は109件(検挙率は90.1%)であった(警察庁刑事局の資料による。)。
前記令和5年法律第66号による改正によって新設された16歳未満の者に対する面会要求等の認知件数は45件、検挙件数は19件であった(警察庁の統計による。)。また、前記令和5年法律第67号によって新設された性的姿態撮影等処罰法違反の認知件数は2,538件、検挙件数は1,296件であった(CD-ROM資料1-2参照。性的姿態撮影等処罰法については、第2編第1章1項(3)参照)。