前の項目 次の項目       目次 図表目次 年版選択

令和6年版 犯罪白書 第2編/第1章/1

1 新規立法の動向
(1)拘禁刑の創設等に関する刑法等の改正

令和4年6月、刑法等の一部を改正する法律(令和4年法律第67号)及び刑法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律(令和4年法律第68号)が成立した。これらにより、<1>懲役及び禁錮を廃止して拘禁刑を創設し、拘禁刑は、刑事施設に拘置し、拘禁刑に処せられた者には、改善更生を図るため、必要な作業を行わせ、又は必要な指導を行うことができるものとすること、<2>再度の刑の全部の執行猶予の言渡しをすることができる対象者の範囲を拡大するなど刑の執行猶予制度を拡充することなどを内容とする刑法及び刑事訴訟法(昭和23年法律第131号)等の一部改正並びに<3>施設内・社会内処遇に関する規定の整備を内容とする刑事収容施設法、更生保護法(平成19年法律第88号)、更生保護事業法(平成7年法律第86号)、少年院法(平成26年法律第58号)及び少年鑑別所法(平成26年法律第59号)の一部改正が行われた(<1>及び<2>は令和7年6月1日施行、<3>は5年12月1日施行)。

(2)公判期日への出頭等の確保及び犯罪被害者等の情報の保護に関する刑事訴訟法等の改正等

令和5年5月、刑事訴訟法等の一部を改正する法律(令和5年法律第28号)が成立した。これにより、公判期日への出頭及び裁判の執行の確保に関しては、<1>公判期日への不出頭罪等の新設、<2>逃走罪及び加重逃走罪の主体の拡張等、<3>保釈等をされている被告人に対する監督者制度の創設、<4>位置測定端末により保釈されている被告人の位置情報を取得する制度の創設等が行われ、犯罪被害者等の情報の保護に関しては、<5>性犯罪の被害者等の個人特定事項の記載がない起訴状抄本等を被告人に送達する措置等により、刑事手続において当該個人特定事項を秘匿するための規定の整備が行われた(<1>は同年11月15日施行、<2>は同年6月6日施行、<3>は6年5月15日施行、<4>は10年5月までに施行、<5>は6年2月15日施行)。

(3)強制わいせつ罪、強制性交等罪等の要件の改正等に関する刑法等の改正等

令和5年6月、刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律(令和5年法律第66号)及び性的姿態撮影等処罰法(令和5年法律第67号)が成立した。前記令和5年法律第66号により、<1>強制わいせつ罪及び準強制わいせつ罪並びに強制性交等罪及び準強制性交等罪をそれぞれ統合し、それらの構成要件を改めて不同意わいせつ罪及び不同意性交等罪とするとともに、13歳以上16歳未満の者に対して当該者が生まれた日より5年以上前の日に生まれた者がわいせつな行為又は性交等をした場合に不同意わいせつ罪又は不同意性交等罪により処罰することを可能とするなどの罰則の改正、<2>16歳未満の者に対する面会要求等の罪の新設、<3>性犯罪についての公訴時効期間の延長、<4>被害者等の聴取結果を記録した録音・録画記録媒体に係る証拠能力の特則の新設等の規定の整備が行われ、前記令和5年法律第67号により、<5>性的な姿態を撮影する行為や、これにより生成された記録を提供する行為等を処罰する規定、<6>性的な姿態を撮影する行為により生じた物を複写した物等の没収を可能とする規定、<7>押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等の措置に関する規定の整備が行われた(<1>、<2>、<5>及び<6>は同年7月13日施行、<3>は同年6月23日施行、<4>は同年12月15日施行、<7>は6年6月20日施行)。

(4)情報通信技術の進展等に対応するための刑事法の整備に関する検討

法務大臣は、令和4年6月、法制審議会に対し、情報通信技術の進展等に対応するための刑事法の整備について諮問を行い(諮問第122号)、同審議会において、調査審議が行われ、6年2月、法務大臣に対する答申がなされた。