児童虐待(保護者によるその監護する18歳未満の児童に対する虐待の行為。児童虐待防止法2条参照)については、従来から、児童虐待防止法を始めとする関係法令の整備等によって、これを防止するための制度の充実が図られてきた。児童虐待防止法について、平成29年法律第69号による改正では、都道府県知事等が、保護者に対し、児童の身辺につきまとったりしてはならないことなどを命ずる、いわゆる接近禁止命令の対象が拡大された(平成30年4月施行)。また、令和元年法律第46号による改正では、親権者が児童のしつけに際して体罰を加えてはならないことなどが明記された(令和2年4月施行)。
児童相談所における児童虐待に関する相談対応件数は、統計を取り始めた平成2年度から一貫して増加しており、令和3年度も過去最高を記録し、20万7,660件(前年度比1.3%増)となった(厚生労働省子ども家庭局(当時)の資料による。児童虐待の内容別相談対応件数の推移については、7-3-5図参照)。
4-6-1-1図は、児童虐待に係る事件(刑法犯等として検挙された事件のうち、児童虐待防止法2条に規定する児童虐待が認められたものをいう。以下この節において同じ。)について、罪名別の検挙件数及び検挙人員総数の推移を見たものである(罪名別の検挙人員については、CD-ROM参照)。検挙件数及び検挙人員は、平成26年以降大きく増加し、令和4年は2,181件(前年比0.3%増)、2,222人(同1.0%増)であり、それぞれ平成15年(212件、242人)と比べると、約10.3倍、約9.2倍であった。罪名別では、特に、暴行や強制わいせつが顕著に増加している。なお、強制わいせつについては、平成29年法律第72号による刑法の改正により、監護者わいせつ等が新設され、処罰対象が拡大した点に留意する必要がある。
4-6-1-2表は、令和4年の児童虐待に係る事件の検挙人員について、被害者と加害者の関係別及び罪名別に見たものである。総数では、父親等の割合が71.6%を占めたが、殺人及び保護責任者遺棄では、母親等の割合がそれぞれ80.9%、66.7%であった。また、母親等のうち、実母の割合が93.7%とほとんどを占めるのに対し、父親等のうち、実父の割合は60.3%であった。さらに、加害者別に罪名の内訳を見ると、父親等のうち、実父では傷害及び暴行が8割強を占め、強制性交等及び強制わいせつは1割強であったが、実父以外では傷害及び暴行が6割弱にとどまり、強制性交等及び強制わいせつが3割強を占めた。