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 昭和41年版 犯罪白書 第三編/第三章/六/1 

六 少年の仮釈放および保護観察

1 少年の仮釈放

 少年の仮釈放には,少年院からの仮退院,少年のとき懲役または禁錮の言渡しを受けた者の少年刑務所からの仮出獄および少年のとき拘留の言渡しを受けた者の拘留場からの仮出場がある。
 ここでは,便宜上(資料その他の関係から),少年院からの仮退院と不定期刑受刑者の仮出獄についてのべる。

(一) 少年院からの仮退院

 少年院からの仮退院は,原則として,少年院で処遇の最高段階に達した者について,本人の性格,行状,態度および能力,施設内での成績,帰住後の環境等から判断して,保護観察のもとでの更生がおおむね期待できるようになったとき,地方更生保護委員会がこれを許すことになっている。
 最近五年間における仮退院申請受理と許否決定の状況は,III-106表のとおりで,その人員は,ともに,昭和三九年までは漸減傾向にあるが,昭和四〇年には増加に転じている。また,棄却・不許可率は累年漸増傾向にあるが,仮出獄のそれに比べるときわめて低い。

III-106表 少年院仮退院の申請受理と許否決定の状況(昭和36〜40年)

 つぎに,少年院からの退院,仮退院別の出院状況を最近五年間についてみればIII-107表のとおり,五年間を通じ,八〇%以上の大部分の者が仮退院で出院している。なお,これを少年院の種別ごとにみると,III-108表のとおりで,昭和三九年の仮退院率は,初等少年院の九九・九%を最高に,以下,中等少年院の八二・一%,医療少年院の七〇・九%,特別少年院の六一・五%と順に低くなっている。すなわち,心身に著しい故障のある少年(医療少年院収容者)や非行性の進んだ少年(特別少年院収容者)は,仮退院になる率が低い。

III-107表 少年院退院・仮退院別人員(昭和35〜39年)

III-108表 少年院種別ごとの退院・反退院人員(昭和39年)

 このような状況のもとに出院した仮退院者が,仮退院期間(保護観察期間)中に非行を犯し,刑事処分または保護処分を受けた状況を,最近五年間について,各年次ごとにみると,III-109表のとおりである。仮退院当年に処分を受けた者は,五・三%ないし六・七%,第二年目は一〇・〇%ないし一三・五%と急増し,第三年目以降は急減している。三年目までに右処分を受けた者は,昭和三五年の仮退院者で二三・七%,同三六年の仮退院者で二五・二%,同三七年の仮退院者で二五・四%となり,五年目まででは昭和三五年の仮退院者で二七・二%,すなわち,七,七九七人の仮退院者中二,一二五人が処分を受けている。これらの率は,いずれも,第二編第三章一「仮釈放」でのべた仮出獄者の仮出獄期間(保護観察期間)中の再犯率に比べきわめて高い。この高さは,仮退院決定に際し,その更生を期待された少年が仮退院期間(保護観察期間)中に再非行を犯す者の多いこと,ひいては,少年の処遇の困難さを示すもので,少年院での処遇や保護観察についての反省の資であるとともに,仮退院の決定についても,なおいっそうの検討や工夫の必要なことを示すものともいえよう。

III-109表 少年院仮退院者の仮退院期間(保護観察期間)中の非行により処分を受けた者の状況(昭和35〜39年)

(二) 不定期刑受刑者の仮出獄

 最近五年間における不定期刑受刑者で,仮出獄許可になった者はIII-110表のとおりで,その人員は,昭和三七年の八五九人を頂点に漸減傾向にある。また,不定期刑仮出獄許可人員の許可決定総人員中に占める割合は,五年間を通じ,わずか三%前後で,きわめて低率である。

III-110表 定期・不定期刑別仮出獄状況(昭和35〜39年)

 いま,不定期刑受刑者の仮出獄許否決定の状況を,全国の統計資料がないので,第二編第三章一「仮釈放」で取り上げた法務総合研究所の資料(関東地方更生保護委員会が昭和三六年に仮出獄許否の決定をした一部について法務総合研究所が行なった調査)でみると,III-111表のとおり,棄却率は七・〇%で,定期刑の棄却率一三・六%に比べ,きわめて低く,大部分が許可されていることがわかる。

III-111表 定期・不定期刑別仮出獄許否決定状況