前の項目 次の項目 目次 図表目次 年版選択 | |
|
家庭裁判所が刑事処分を相当と認めて検察官に送致した少年については,犯罪のけん疑がないと思料される場合および新たな事情の発見によって起訴を相当でないと思料し,再び家庭裁判所に送致する場合以外には,検察官は,公訴を提起しなければならず(少年法第四五条第五号),事案に応じて,公判請求,略式命令請求または即決裁判請求の手続がとられ,成人の刑事事件と同様に,地方裁判所または簡易裁判所の審理を経て裁判がなされる。かようにして起訴され,第一審裁判所において有罪の認定を受けた少年に対する科刑の概況を昭和三五年以降についてみると,III-59表のとおりである。この表によると,昭和四〇年の有罪人員総数は一二〇,〇七七人で,昭和三五年の約二・六倍となっているが,その増加は,罰金の激増にもとづくものであり,懲役・禁鋼に処された者は,横ばいないし漸減の状態にある。懲役・禁錮に処された者のうち,実刑に処されたものは昭和四〇年において五二・一%であるが,その割合は,ここ二,三年漸減の傾向を示している。少年に灯する刑罰のうち,前金の増加は,道路交通法違反等交通関係事犯に対する検察官送致決定数が増加したことに伴うものである。なお,裁判所は,審理の結果,少年の被告人を保護処分に付するのが相当であると認めるときは,決定をもって,事件を家庭裁判所に移送しなければならない(少年法第五五条)ことになっているが,その数は,例年きわめて少なく,昭和三九年は二〇人にすぎない。
III-59表 少年に対する刑罰の概況(第一審有罪人員)(昭和35〜40年) つぎに,昭和三九年中に第一審の裁判のあった少年について,主要罪名別の科刑状況を, 一八歳未満の少年(以下,本項において「年少少年」という。)と,一八歳以上二〇歳未満の少年(以下,本項において「年長少年」という。)とに区別してみると,III-60表(1)(2)のとおりである。III-60表 少年事件第一審裁判結果別人員(昭和39年) まず,懲役・禁錮の実刑と執行猶予および罰金の割合を刑法犯と特別法犯の合計数についてみると,年長少では,懲役,禁錮の実刑に処された者は,八九五人,執行猶予となった者は,八〇四人,罰金に処された者は,六九,一九七人で,その比率は,実刑が一・二%,執行猶予が一・一%,罰金が九七・七%となっている。懲役・禁錮の実刑では,窃盗の三三二人が最も多く,強盗の一三三人,傷害の九〇人,わいせつ・かんいんの八〇人,恐かつの七三人がこれに続いている。年少少年では,懲役・禁錮の実刑は一七三人,懲役・禁錮の執行猶予は一六二人,罰金は三〇,八四〇人で,その比率は,実刑が〇・五%,執行猶予が〇・五%,罰金が九九・〇%であり,年長少年に比べて懲役・禁錮の言渡しの比率がやや低くなっている。懲役・禁錮の実刑では,窃盗の四七人が最も多く,強盗の四六人,殺人の二一人,わいせつ・かんいんの一九人がこれに続いているが,その実数は,いずれの罪名においても,年長少年より著しく少ない。なお,罰金においては,道交違反および過失傷害がその九七%以上を占めていることは,年長少年と年少少年とで全く同様である。 最後に,少年に対する刑の執行状況のうち,財産刑の執行状況をみてみよう。III-61表は昭和三八年における少年の財産刑の執行状況を成人と比べてみたものであるが,これによると,徴収成績は,成人が九三・四%であるのに対し,少年は八六・四%で七・〇%低い。また徴収未済事由としては,少年は,所在が判明していながら徴収未済となっているものが七〇%をこえ,成人の五一・一%を上回っており,未済期間についても,少年は,一年以上の長期未済率が三〇%以上で,成人の二二・二%よりも高くなっている。かように,少年に対する財産刑の執行状況が成人より不良となっている原因の一つとして,少年には,罰金,科料を納付しない場合における労役場留置の制度が認められていないことが考えられる。 III-61表 罰金・科料徴収状況(昭和38年) |