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2 処分の状況 家庭裁判所が,少年事件について調査を行なった結果,所在が明らかでないために審判に付することができないとか,非行がきわめて軽微で審判に付するのが相当でないと認められる場合には,審判を開始しない旨の決定をする(少年法第一九条第一項)。
調査の結果,審判を開始するのが相当と認められる場合には,家庭裁判所はその旨の決定(少年法第二一条)をして,少年法に定める方式で直接審理をする。その結果,少年法第一八条または第二〇条にあたる場合であると認めるときは,それぞれ都道府県知事または児童相談所長あるいは検察官に送致する旨の決定をする(少年法第二三条第一項)。また保護処分に付するのが相当と認めるときは,つぎの三種の保護処分,すなわち,(1)保護観察所の保護観察に付すること,(2)教護院または養護施設に送致すること,(3)少年院に送致することのいずれかの保護処分を決定し(少年法第二四条),保護処分に付することができないとか,その必要がないと認められる場合には,不処分の決定を行なう(少年法第二三条第二項)。なお,調査または審判の結果,すでに二〇歳以上であることが判明した場合には,決定で,検察官に事件を送致しなければならない(少年法第一九条第二項,第二三条第三項)。 これらの処分の状況を,最近五年間の統計によってみると,III-55表のとおりである。処分のうち,最も多いのは不開始で,終局決定総数の六四・五%ないし七一・一%を占めている。つぎに多いのは不処分で総数の一〇・七%ないし一八・八%であるが,昭和三七年および同三八年の二年間は,検察官送致が不処分より多かったのに,昭和三九年には,再び不処分が検察官送致よりも多くなっているのが目だっている。 III-55表 家庭裁判所終局決定人員(昭和35〜39年) 検察官送致は,昭和三五年には総数の一〇・四%であったのが,昭和三七年には総数の一五・五%と増加した。しかし,その後は,漸減の傾向をみせ,昭和三九年には一二・九%となっている。つぎに,保護処分の中で最も多いのは保護観察で,終局決定総数の二%から四%の間にあるが,昭和三七年以降漸増の傾向を示しているのが注目される。そのつぎは少年院送致で,総数の一%前後であるが,総数に対する割合および実数において,昭和三七年以降ほぼ横ばい状態にあるといえよう。教護院または養護施設への送致は〇・一%程度でその数も少なく,とくに顕著な動きはみられない。 つぎに,昭和三九年の終局決定人員につき,道交違反事件とその他の事件(以下,この項において「一般事件」という。)とを分けてみると,III-56表のとおりで,これによると,道交違反事件において,不開姶は六七・九%,不処分は一七・一%で,一般事件と比べ,不開始の数がきわめて高い率を占めている。他方,検察官送致は平均の一二・九%をこえる一四・二%で,検察官送致の総数の八七・二%を占めているが,保護処分は〇・八%にとどまっている。 III-56表 少年一般事件・道交違反事件別の家庭裁判所終局決定人員(昭和39年) つぎに,一般事件についてみると,不開始は五二・〇%,不処分は二五・五%で,両者をあわせると,終局決定の七七・五%を占めている。保護処分に付された者は一五・一%で,道交違反事件に比べその比率が高いが,これは,事件の性質の差異からみて当然であろう。保護処分のうちでは,保護観察が最も多く,一〇・七%で,ついで,少年院送致が四・三%となっている。検察官送致は八・〇%で,道交違反事件に比し,かなり低率である。つぎに,刑法犯の主要罪名について終局決定の内訳をみることとしよう。III-57表は,昭和三九年に終局決定のあった事件のうち,窃盗,恐かつ,傷害,暴行,殺人,強盗,放火,強かん,業務上過失致死傷について,処分別の人員と百分比を示したものである。 III-57表 刑法犯主要罪名別終局決定人員(昭和39年) この表によると,まず,窃盗,恐かつ,傷害,暴行においては,不開始・不処分の割合がきわめて高く,窃盗は八二・七%,恐かつは七〇・五%,傷害は七七・四%,暴行は八九・四%が不開始,不処分になっている。検察官送致の割合の多いものは,殺人(四三・九%),業務上過失致死傷(三八・九%)で,強盗(一一・三%),強かん(七・四%)がこれについでいるが,その他の犯罪は,いずれも五%以下で,きわめて低率である。 少年院送致の割合の多いのは,放火(二六・四%),強盗(二四・八%),殺人(二一・四%),強かん(一九・四%),恐かつ(七・八%),で,その他の犯罪は,いずれも五%以下であるが,実数をみると,窃盗の三,八七九人が最も多く,これは,昭和三九年中における少年院送致決定総数の過半数を占めている。 保護観察の割合の多いのは,強かん(三九・八%),強盗(三四・六%),放火(二四・〇%),殺人(二一・四%)で,恐かつ(一九・一%),傷害(一三・八%),窃盗(一〇・七%)がこれについでいるが,実数をみると,少年院送致の場合と同様,窃盗が最も多く,保護観察処分の約半数を占めている。 右に述べたように,家庭裁判所の処分状況については,一般的にみて,不開姶・不処分決定の割合がきわめて多く,保護処分および検察官送致の割合がともにきわめて少ないことが目だっている。そこで,昭和三九年中に家庭裁判所で終局決定がなされた少年事件につき,これに対する検察官の処遇意見と,家庭裁判所の終局決定とを対比させ,その合致率をみてみると,III-58表のとおりである。この表によると,検察官が付した処遇意見と,家庭裁判所の終局決定との合致率は,刑事処分相当の意見を付した事件の総数において四三・七%,少年院送致相当の意見を付した事件の総数において三一・〇%,保護観察相当の意見を付した事件の総数において一七・八%にすぎない。また,検察官が刑事処分ないし保護処分相当の意見を付した事件のうち,不開姶・不処分決定のなされたものの割合は,刑事処分相当意見総数の五〇・九%,少年院送致相当意見総数の三二・九%,保護観察相当意見総数の七二・七%をそれぞれ占めており,検察官の処遇意見と家庭裁判所の終局決定とが,いちじるしく食い違っていることが注目される。 III-58表 検察官の処遇意見と家庭裁判所の終局決定との合致率(昭和39年) なお,家庭裁判所の保護処分の決定に対しては,決定に影響を及ぼす法令の違反,重大な事実の誤認または処分のいちじるしい不当を理由とするときに限り,少年,その代理人または附添人から不服申立(抗告)をすることができる(少年法第三二条)こととなっているが,司法統計年報によりその件数をみると,その数は,きわめて少なく,昭和三六年は二三三件,同三七年は二八四件,同三八年は二九九件となっており,各年の保護処分決定総数に対する割合も,約一%にすぎない |