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 昭和41年版 犯罪白書 第一編/第一章/三 

三 女子犯罪(とくに刑法犯)の概況

 犯罪および犯罪者という観点からみた場合,わが国の女子は,男子に比べて,どのような特徴を示すか。以下この点について解説を試みようとするのであるが,遺憾ながら,資料がとぼしく,十分には意をつくしえないことをあらかじめことわっておく。女子犯罪の実態は,多くの国で不明の部分が多いとされているが,わが国も同様の実情にあるのである。
 このことの最大の理由は,わが国では,一部の国と同様に,女子犯罪について統計上の暗数が大きいという点にある。いわゆる女子犯罪は,これを大別して,女子特有の犯罪,すなわち行為者が女子であることを要件とする犯罪(たとえば,刑法犯では同法第二一二条所定の懐胎婦女堕胎罪,特別法犯では売春防止法第五条所定の売春勧誘等)と,それ以外の女子犯罪,すなわち,男子も女子も実行可能のその他の多くの罪の二とすることができる。ところで,まず女子特有の罪については未発覚による統計上の暗数が多いように思われる(前記の堕胎や売春勧誘などはおそらくその顕著な例であろう。)。つぎに,それ以外の女子犯罪については,未発覚の点を別としても,犯人が女子であること,または,その他の事情を考慮しての,いわば不問措置による暗数が多いように疑われる。
 要するに,女子犯罪および女子犯罪者について,多少とも実態に迫った解説をしようとすれば,既存の統計資料などを使用する程度では不十分であって,大部分の問題の解明は,今後の徹底的調査研究に待たねばならないということを強調しておきたい。しかし,さしあたりは,既存の統計資料などにより,主として女子刑法犯について不十分ながら解説を試み,適宜問題点を指摘したいと思う。