刑事司法における各段階において、各機関等が新型コロナウイルス感染症対策として実施した方策は、今後、同感染症を含む感染症がまん延した際の対策に役立つと考えられるほか、副次的に新たな犯罪者処遇の在り方の可能性を示唆したものとも言える。
まず、感染症対策としては、これまで実施してきた出勤職員数抑制のためのテレワーク等の勤務形態の活用や、オンライン会議等リモート方式での会議、面接、面会等を引き続き活用することが考えられる。現在、情報通信技術の進展等に対応するため検討されている刑事手続の電子化(第2編第1章1項(6)参照)も、人と人との物理的な接触の機会を減らすものであり、感染症対策に資する効果も期待できる。
また、刑事司法においては、これまであまり活用されてこなかったオンライン会議等リモート方式での会議、面接、面会等が、今後、新型コロナウイルス感染症感染拡大が収束した後も、充実した処遇を実現するために役立つ手段となり得る。他方で、リモート方式を用いた処遇は、完全には対面による処遇と置き換えることができず、今後、リモート方式の可能性と限界を考慮しながら、より多様かつ効果的な処遇を展開していくことが望まれる。
以上のように、新型コロナウイルス感染症感染拡大により、関係機関においては、その感染拡大防止のために様々な方策を講じることを余儀なくされたものの、他方で、これらの新たな方策を検討・実施した経験により、これまでにはなかった新たな手段・方法を獲得したとも言える。今回実施した多様な方策を今後の処遇に活用していくことで、より充実した処遇を行うことが期待される。