特殊詐欺等、人々の混乱や窮状につけ込んで冷静な判断を失わせる犯罪では、パンデミックも口実として利用される。これらを防止するためには、その手口を新聞やテレビ等で取り上げるなどして注意喚起することが必要である。
また、給付金制度等を悪用した不正受給事案については、徹底した取締りとその公表により、詐欺によるものかは不明であるものの、多くの自主返納事案があった。取締りにより悪質事案を検挙するとともに、積極的な広報も行い、自主返納による被害回復を行うことも重要である。
刑法犯認知件数は、初めて緊急事態宣言が発出された令和2年4月及び5月に大きく減少しており、外出自粛等の影響により、犯行機会が減少したものと考えられる。刑法犯認知件数は、その後も前年同月比で大きく減少したまま推移したが、3年4月以降においては、前年同月比で減少傾向は続いていたものの、前年同月から増加した月もあった。「コロナ禍」が収束するか否かにかかわらず、今後の犯罪動向については予断を許さない状況にあると言え、引き続き4年以降の動向を注視していく必要がある。
児童虐待や配偶者からの暴力については、新型コロナウイルス感染症感染拡大下における外出自粛等の影響による暗数の増加も懸念されるところであり、法務総合研究所が実施している犯罪被害実態(暗数)調査を始め、可能な限りその実態解明に努めていくことも重要である。
薬物を始めとする密輸入事案については、今後、入国者数が増加するに伴って増加することも懸念されるところであり、引き続き徹底した取締りを行うなどの水際対策が重要である。
サイバー犯罪については、新たな手口やその対策についての積極的広報を行うとともに、個人・企業・団体等において情報セキュリティ対策を行うなどの予防策を講じることが肝要である。
来日外国人については、今後再び新規入国者数が増加することが考えられることから、例えば、その資格の付与に当たっての審査を十分に実施するほか、入国後の生活状況等について、必要なフォローや受入先である事業者に対する監督を充実させることが犯罪予防にもつながると考えられる。来日外国人犯罪の動向についても、引き続き調査・分析を行い、有効な予防策等の検討を継続していく必要がある。