前の項目 次の項目       目次 図表目次 年版選択

令和4年版 犯罪白書 第7編/第3章/第3節/3

3 児童虐待・配偶者からの暴力

海外においては、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う都市封鎖(ロックダウン)下において、家庭内暴力が増加したという調査結果もある(ただし、減少したとの調査結果もある。コラム5参照)。家族が自宅内で一緒に過ごす時間が増えたことが要因の一つと考えられている。我が国においては、児童虐待の検挙件数が近年増加傾向にあり、配偶者からの暴力事案等の検挙件数についても近年高止まりをしているところ(4-6-1-1図及び4-6-2-1図参照)、ここでは、これらの犯罪と関連し得る指標と見比べるなどしつつ、その動向を見ることとする。

月別の数値が入手可能であった令和2年度における保育所等(認可保育所、保育所型認定こども園、地域型保育事業所及びへき地保育所)の休園施設数と児童相談所における児童虐待対応件数の推移を見ると、7-3-3-3図のとおりである。なお、児童虐待の被害者は保育所等の児童に限られるものではなく、保育所等の休園施設数については参考指標の一つとして見たものである。休園施設数が最も多かった4月(103.8)の児童虐待対応件数は1万5,524件で、休園施設数が最も少なかった6月(1.3)の児童虐待対応件数は1万8,480件であり、児童虐待対応件数と保育所等の休園施設数との関係は確認できなかった。

7-3-3-3図 児童相談所での児童虐待相談対応件数と保育所等休園施設数の推移(月別)
7-3-3-3図 児童相談所での児童虐待相談対応件数と保育所等休園施設数の推移(月別)
Excel形式のファイルはこちら

平成21年度以降の児童相談所における児童虐待の内容別相談対応件数の推移を見ると、7-3-3-4図のとおりである。児童虐待の相談対応件数は、統計を取り始めた2年度から増加し続けており、令和2年度も過去最高を記録し、20万5,044件となった(厚生労働省子ども家庭局の資料による。)。もっとも、同年度の対前年比は、総数、身体的虐待、ネグレクト及び心理的虐待については平成22年度以降で最も低く、このうちネグレクト(前年度比5.7%減)については、その相談対応件数自体が22年度以降では初めて前年度を下回った。これらのことから、令和2年度においても、児童虐待の相談対応件数の増加傾向が継続しているものの、その増加は比較的緩やかであったことが認められる。

7-3-3-4図 児童虐待の内容別相談対応件数の推移
7-3-3-4図 児童虐待の内容別相談対応件数の推移
Excel形式のファイルはこちら

令和元年度以降のDV相談件数の推移を月別で見ると、7-3-3-5図のとおりである。新型コロナウイルス感染症の感染拡大に起因して、DVの増加・深刻化が懸念されたことを受けて、24時間対応の電話相談、オンライン・チャット(SNS)や電子メールを活用した相談等を実施するため、2年4月20日からDV相談プラスが緊急的に開始されたことから、その前後で相談件数全体を比較することは困難であるが、配偶者暴力相談支援センターへの相談に限って見ると、同センターへの相談が最も多かったのは同月(1万2,848件)であり、次いで、同年5月(1万2,085件)、同年6月(1万2,055件)の順であった。同年の月別の相談件数の対前年比を見ると、4月が37.7%増、5月が22.4%増、6月が18.0%増と、4月から6月にかけて、顕著な増加がみられた。同様に3年の月別の相談件数の対前年比を見ると、4月が21.1%減、5月が20.0%減、6月が7.9%減と、顕著な減少が見られた。これらのことから、元年度は同センターの中に月別の相談件数を集計していない施設があるため、月別の相談件数が実際の相談件数よりも平均1.6%少なく集計されていることを考慮してもなお、2年4月から6月にかけて、同センターへの相談件数が一時的に増加したものと認められる。なお、同年の配偶者からの暴力事案等の検挙件数については、前年から減少した(4-6-2-1図参照)。

7-3-3-5図 DV相談件数の推移(月別)
7-3-3-5図 DV相談件数の推移(月別)
Excel形式のファイルはこちら