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令和4年版 犯罪白書 第1編/第1章/第2節/2

2 強制性交等・強制わいせつ

平成29年6月、刑法の一部を改正する法律(平成29年法律第72号)が成立し、同年7月に施行された。同法により、<1>従来の強姦が強制性交等に改められ、被害者の性別を問わなくなり、かつ、性交(姦淫)に加えて肛門性交及び口腔性交をも対象とし、法定刑の下限が引き上げられ、<2>監護者わいせつ監護者性交等が新設され、18歳未満の者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じたわいせつ行為や性交等が処罰されることとなり、また、<3>強姦、強制わいせつ等(同法による改正前の刑法176条、177条及び178条に規定する罪)の罪は親告罪であったが、これらの罪は、改正時に、監護者性交等の罪と共に、非親告罪とされた。

強制性交等(前記改正前は強姦及び準強姦であり、改正後は強姦、準強姦、準強制性交等及び監護者性交等を含む。)の認知件数、検挙件数及び検挙率の推移(最近30年間)は、1-1-2-5図のとおりである。認知件数は、平成9年から増加傾向を示し、15年に2,472件を記録した後、23年まで減少し続け、24・25年にやや増加したものの、26年から再び減少し、28年は昭和57年以降で最少の989件であった。その後、平成29年から令和元年までやや増加し、2年は前年より減少したが、3年は前年より増加して1,388件(前年比56件(4.2%)増。なお、前記改正によって対象が拡大した点には留意する必要がある。)であり、うち女性を被害者とするものは1,330件であった(6-1-3-1表参照)。検挙件数も、平成15年に1,569件を記録した後、減少傾向にあったが、29年から増加傾向にあり、令和3年は1,330件(同33件(2.5%)増)であった。検挙率は、平成10年から低下し、14年に62.3%と戦後最低を記録した後は上昇傾向にあり、27年以降は、いずれの年も90%台と高水準で推移しており、令和3年は95.8%(同1.6pt低下)であった。

このうち、令和3年における監護者性交等の認知件数は88件、検挙件数は82件(検挙率は93.2%)であった(警察庁刑事局の資料による。)。

なお、肛門性交のみ、口腔性交のみ、又は肛門性交及び口腔性交のみを実行行為とする強制性交等について、令和3年に第一審判決があったものとして法務省刑事局に対し各検察庁から報告があった件数は、83件であった(法務省刑事局の資料による。)。

1-1-2-5図 強制性交等 認知件数・検挙件数・検挙率の推移
1-1-2-5図 強制性交等 認知件数・検挙件数・検挙率の推移
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強制わいせつ(前記改正前は準強制わいせつを含み、改正後は準強制わいせつ及び監護者わいせつを含む。)の認知件数、検挙件数及び検挙率の推移(最近30年間)は、1-1-2-6図のとおりである。認知件数は、平成の初期から増加傾向にあったが、平成11年から13年にかけて前年比25.8~38.6%の勢いで増加し続け、15年には昭和41年以降で最多の1万29件を記録した。その後、平成21年まで減少し、22年から25年まで増加傾向にあったが、26年から減少し続け、令和2年には前年比746件(15.2%)減と大きく減少したところ、3年は前年よりやや増加して4,283件(前年比129件(3.1%)増。なお、前記改正によって対象が縮小(口腔性交及び肛門性交が、強制性交等の対象行為となった。)及び拡大(監護者わいせつが新設された。)した点には留意する必要がある。)であった。検挙件数は、平成5年から25年までは3,000件台、26年から30年までは4,000件台で推移していたが、令和元年に再び3,000件台となり、3年は3,868件(同102件(2.7%)増)であった。検挙率は、平成11年に前年比18.9pt、12年に同14.8pt低下し、14年には35.5%と昭和41年以降で最低を記録したが、その後は上昇傾向にあったところ、令和3年は前年からわずかに低下し、90.3%(同0.3pt低下)であった(CD-ROM参照)。

このうち、令和3年における監護者わいせつの認知件数は102件、検挙件数は99件(検挙率は97.1%)であった(警察庁刑事局の資料による。)。

1-1-2-6図 強制わいせつ 認知件数・検挙件数・検挙率の推移
1-1-2-6図 強制わいせつ 認知件数・検挙件数・検挙率の推移
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