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令和3年版 犯罪白書 第8編/第6章/第1節/1

第1節 詐欺事犯の動向等
1 認知・検挙状況等

刑法犯の認知件数が平成14年をピークに減少の一途をたどっているのに対し,詐欺の認知件数は,15年から大きく増加し,17年に約8万6,000件に達した後,減少と増加を繰り返したものの,近年も3万件を超える水準を維持している。詐欺の認知件数は,刑法犯認知件数全体やその7割近くを占める窃盗とは異なる動きを示している。このような詐欺の認知件数の動きは,後述する特殊詐欺の認知件数の動きと似通っている(なお,特殊詐欺については,その定義上,詐欺のみならず恐喝又は窃盗として計上されるものも含まれ得ることに留意する必要がある。)。詐欺の認知件数を手口別に見ると,比較的単純な手口である「借用」及び「無銭」については,最近20年間で大きく減少している。近年,刑法犯の検挙人員に占める高齢者の比率(高齢者率)の上昇が進んでいる。詐欺の高齢者率も上昇傾向にはあるが,令和2年の詐欺の高齢者率は,刑法犯の検挙人員総数の高齢者率と比べて顕著に低い。詐欺の検挙人員を年齢層別に見ると,20歳代の者の構成比が上昇傾向にあり,同年には約3割に達している。これには,後述のとおり,特殊詐欺の検挙人員の約半数を20歳代の者が占めていることも影響しているものと思われる。詐欺の検挙人員総数に占める暴力団構成員等の比率は,平成27年以降低下し続けているが,令和2年でも15.0%を占めており,刑法犯の検挙人員総数に占める暴力団構成員等の比率と比較すると顕著に高い。共犯関係では,同年の詐欺の検挙事件の共犯率は,検挙事件総数の共犯率を大きく上回り,特に,4人以上の組によるものや共犯人数不明のものの構成比が高い。

特殊詐欺は,平成15年夏頃から目立ち始め,16年には認知件数が約2万5,700件に達し,その後も20年までは2万件前後で推移した。同年に「振り込め詐欺撲滅アクションプラン」が警察庁及び法務省により共同で策定・公表されるなど,対策が強化されたこともあり,一旦は大きく減少したが,再び増加し,近年も1万件を超える水準で推移している。特殊詐欺の検挙率は,近年上昇しているが,令和2年でも54.8%であり,特殊詐欺が組織的に敢行されるものであることに鑑みると,特殊詐欺を実行する犯罪組織が活動し続けていることが示唆される。特殊詐欺の認知件数の推移を類型(8-3-1-16表参照)別に見ると,平成17年及び18年を除き,オレオレ詐欺(令和2年は預貯金詐欺を含む。)が最も多いが,融資保証金詐欺が平成17年,還付金詐欺が20年及び28年,架空料金請求詐欺が29年をそれぞれピークに増減するなどの動きを見せており,特殊詐欺を実行する犯罪組織が,社会情勢や特殊詐欺撲滅のために講じられた各種対策(コラム9)の内容等に応じ,成功する可能性が高いと思われる方法を選択して犯行を継続していることを示唆している。26年以降の特殊詐欺(特殊詐欺4類型(本編第3章第1節1項(3)イ(ア)参照)に限る。)の検挙人員の年齢層別構成比の推移を見ると,30歳未満の若年者層の構成比が62%台から73%台の間で推移する一方,65歳以上の高齢者の構成比は1.0%以下にとどまっている。