確定記録調査対象者について,有期の懲役の科刑状況別構成比を,総数並びに特殊詐欺の事件数別及び役割類型別に見ると,8-5-3-16図のとおりである。
総数では,約3分の1が全部執行猶予の者,約3分の2が全部実刑の者(一部執行猶予の者はいなかった。)であった。令和2年における地方裁判所における詐欺の科刑状況別構成比(全部執行猶予の者52.8%,全部実刑(一部執行猶予を含む。)の者47.2%。8-3-1-36図参照)と比較すると,確定記録調査対象者は,全部実刑の者の構成比が高かった(なお,特殊詐欺には,詐欺以外の罪名のものが含まれ得ることに留意する必要がある。)。全部実刑の者の刑期について見ると,2年以上3年以下の者の構成比(27.2%)が最も高く,次いで,3年を超え4年以下の者(17.3%),5年を超え10年以下の者(9.9%),1年以上2年未満の者(7.4%),4年を超え5年以下の者(5.0%)の順であった。
確定記録調査対象者が行った特殊詐欺の事件数(本節2項(2)参照)別に見ると,事件数ごとに母数が異なること等に留意する必要があるが,全部実刑の者の構成比は,1件では34.7%,2件では72.1%,3件では92.3%,4件では77.8%,5件以上では92.3%であった。全部実刑の者の刑期を見ると,1件から4件までは,いずれも2年以上3年以下の者の構成比が最も高く,次いで,1件から3件までは,3年を超え4年以下の者(1件では1年以上2年未満の者と,3件では5年を超え10年以下の者とそれぞれ同率)の順であった。他方,5件以上では,3年を超え4年以下の者(32.7%)の構成比が最も高く,次いで,5年を超え10年以下の者(25.0%),4年を超え5年以下の者(17.3%),2年以上3年以下の者(13.5%)の順であった。他方,全部執行猶予の者の刑期について見ると,2年未満は,特殊詐欺の事件数が1件のものに2人いるのみであり,その余は2年以上3年以下であった。
特殊詐欺の役割類型別では,全部実刑の者の構成比は,「主犯・指示役」(84.2%)が最も高く,次いで,「架け子」(83.6%),「犯行準備役」(64.5%),「受け子・出し子」(54.9%)の順であった。全部実刑の者の刑期を見ると,5年を超え10年以下の者及び4年を超え5年以下の者の構成比は,「主犯・指示役」,(それぞれ21.1%)が最も高く,次いで,「架け子」(16.4%,7.3%),「犯行準備役」(16.1%,6.5%),「受け子・出し子」(1.1%,なし)であった。