詐欺の仮釈放者(全部実刑者・一部執行猶予者)及び保護観察付全部・一部執行猶予者について,有前科者(今回の保護観察開始前に罰金以上の刑に処せられたことがある者をいう。以下(1)において同じ。)の保護観察開始人員及び有前科者率(保護観察開始人員に占める有前科者の人員の比率をいう。以下(1)において同じ。)の推移(最近10年間)は,8-3-2-15図のとおりである。仮釈放者(全部実刑者・一部執行猶予者)の有前科者率は,平成23年から28年まで6割台で推移していたが,29年からは5割台で推移し,令和2年(54.8%)は,平成23年よりも9.6pt低下している。保護観察付全部・一部執行猶予者の有前科者率は,26年まで4割台で推移した後,27年からは3割台で推移し,令和2年(31.8%)は,平成23年よりも9.9pt低下している。また,詐欺の仮釈放者(全部実刑者・一部執行猶予者)及び保護観察付全部・一部執行猶予者の有前科者率は,全ての仮釈放者(全部実刑者・一部執行猶予者)及び保護観察付全部・一部執行猶予者の有前科者率(5-2-4-1図CD-ROM参照)と比べると,顕著に低く,令和2年では,前者で28.6pt,後者で43.2pt,それぞれ低くなっている。
詐欺の仮釈放者(全部実刑者・一部執行猶予者)及び保護観察付全部執行猶予者の取消・再処分率(第5編第2章第4節2項参照)の推移(最近10年間)を,男女別・年齢層別・就労状況別に見ると,8-3-2-16図のとおりである(なお,保護観察付一部執行猶予者の保護観察終了者はいなかった。)。
男女別に取消・再処分率を見ると,仮釈放者(全部実刑者・一部執行猶予者),保護観察付全部執行猶予者共に,男性が女性よりも高い傾向にある。
年齢層別に取消・再処分率を見ると,仮釈放者(全部実刑者・一部執行猶予者),保護観察付全部執行猶予者共に,年による変動が大きい年齢層もあるものの,おおむね仮釈放者(全部実刑者・一部執行猶予者)は50~64歳の者が高く,保護観察付全部執行猶予者は30歳未満の者が高い傾向にある。また,全ての仮釈放者(全部実刑者・一部執行猶予者)及び保護観察付全部執行猶予者の取消・再処分率(5-2-4-3図参照)と比較すると,令和2年においては,仮釈放者(全部実刑者・一部執行猶予者)では全ての年齢層で詐欺が低いのに対して,保護観察付全部執行猶予者では,30~49歳の者を除く年齢層で詐欺が高くなっている。
保護観察終了時の就労状況別に取消・再処分率を見ると,仮釈放者(全部実刑者・一部執行猶予者),保護観察付全部執行猶予者共に,無職であった者は,有職であった者と比べ,取消・再処分率が一貫して高い。また,全ての仮釈放者(全部実刑者・一部執行猶予者)及び保護観察付全部執行猶予者の取消・再処分率(5-2-4-3図参照)と比べると,仮釈放者(全部実刑者・一部執行猶予者),保護観察付全部執行猶予者共に,有職者の取消・再処分率は詐欺が低く,無職者の取消・再処分率は詐欺が高い傾向にあったが,令和2年においては,有職者について,保護観察付全部執行猶予者(22.5%)で4.4pt,詐欺が上回った(CD-ROM参照)。
8-3-2-17表は,詐欺の仮釈放者(全部実刑者)及び保護観察付全部執行猶予者について,保護観察が開始された年(最近10年間)ごとに,保護観察が開始された日から5年以内に再犯又は遵守事項違反により仮釈放又は刑の執行猶予の言渡しを取り消された者の人員を見たものである(仮釈放者(一部執行猶予者)及び保護観察付一部執行猶予者については,CD-ROM参照)。平成23年から27年までの各年に保護観察が開始された者の取消状況を見ると,仮釈放者(全部実刑者)のうち仮釈放を取り消された者の比率は2.8から4.8%の間で,保護観察付全部執行猶予者のうち全部執行猶予を取り消された者の比率は21.5から30.3%の間でそれぞれ推移しており,全ての仮釈放者(全部実刑者)及び保護観察付全部執行猶予者(5-2-4-4表参照)と比べて,顕著な違いは見られなかった。
令和2年における詐欺の保護観察処分少年(交通短期保護観察の対象者を除く(以下(3)において同じ。)。同年中に保護観察が開始された者に限る。)について,保護処分歴別構成比を男女別に見ると,8-3-2-18図のとおりである。詐欺の保護観察処分少年は,全ての保護観察処分少年の保護処分歴別構成比(5-2-5-2図<1>参照)と比べると,保護処分歴を有する者の構成比が,男子(16.6%)で2.3pt,女子(8.5%)で1.8pt,それぞれ低かった。
8-3-2-19表は,平成23年から令和2年までの間に保護観察が終了した詐欺の保護観察処分少年及び少年院仮退院者について,再処分率(第5編第2章第5節4項参照)の推移を見たものである。保護観察処分少年の再処分率は11%台から21%台の間,少年院仮退院者の再処分率は6%台から16%台の間でそれぞれ推移している。全ての保護観察処分少年及び少年院仮退院者の再処分率の推移(5-2-5-5表参照)と比較すると,少年院仮退院者では詐欺が一貫して低くなっており,同年(12.0%)は7.5pt低かった。
平成23年から令和2年までの間に保護観察が終了した詐欺の保護観察処分少年及び少年院仮退院者のうち,再処分(保護観察期間中に再非行・再犯により新たな保護処分又は刑事処分(施設送致申請による保護処分及び起訴猶予の処分を含む。刑事裁判については,その期間中に確定したものに限る。)を受けた者について,再処分に係る非行名・罪名別の構成比を見ると,8-3-2-20図のとおりであり,詐欺の構成比は,13.7%であった。その他を除く非行名・罪名について,各年の構成比を見ると,平成30年を除いて窃盗が最も高い。詐欺の構成比は,上昇傾向にあったが,令和2年は前年より13.5pt低下し,8.1%であった(CD-ROM参照)。