詐欺の入所受刑者人員のうち,初入者及び再入者の人員並びに再入者率(第5編第2章第3節1項参照)の推移(最近20年間)を男女別に見ると,8-3-2-5図のとおりである。男性の再入者率は,平成13年(55.8%)からおおむね低下傾向にあったが,28年以降は横ばいで推移している。女性を見ると,詐欺の入所受刑者総数は,15年(197人)をピークにおおむね減少傾向にあるが,再入者率は年による変動が大きい。女性の再入者率は,男性と比べて一貫して低く,令和2年は男性が34.9%であったところ,女性は15.3%であった。これは,いずれも入所受刑者全体の再入者率(58.0%。5-2-3-1図<1>参照)と比べて低い。
詐欺の入所受刑者の年齢層別構成比の推移(最近20年間)を初入者・再入者別に見ると,8-3-2-6図のとおりである。初入者・再入者共に,50~64歳の者の構成比は,平成13年からおおむね低下傾向にあるが,初入者では,30歳未満の者の構成比が上昇傾向にあり,令和2年(43.7%)は,平成13年(19.1%)と比べると,約2倍に上昇している。また,初入者における30歳未満の者及び30歳代の者の各構成比の割合は,再入者と比べて,いずれも一貫して高い。
令和2年の再入者の前刑罪名(前回入所した時の罪名をいう。以下この項において同じ。)別構成比を罪名別に見るとともに,詐欺について更に年齢層別に見ると,8-3-2-7図のとおりである。詐欺について,同一罪名再入者(再入罪名と前刑罪名が同一である者をいう。以下この項において同じ。)の構成比は,総数で44.3%であり,年齢層別に見ると,65歳以上の者(70.9%)が最も高く,次いで,50~64歳の者(44.0%),40歳代の者(37.9%)の順であった。また,30歳未満の者においては,前刑罪名が窃盗の者の構成比が約4割を占め,最も高い。
同一罪名再入者の構成比について罪名別に見ると,詐欺は,窃盗及び覚醒剤取締法違反より低く,傷害・暴行より高い。また,詐欺以外の罪名においても,詐欺が前刑罪名である者が一定割合含まれているが,いずれも1割に満たない(窃盗は3.6%,傷害・暴行は3.4%,覚醒剤取締法違反は2.1%)。
令和2年の再入者のうち,前刑罪名が詐欺の者の再犯期間(第5編第2章第3節4項参照)を前刑出所時の年齢層別に見ると,8-3-2-8図<1>のとおりである。前刑罪名が詐欺の再入者のうち,65歳以上の者では,再犯期間が6月未満の者の構成比が約5割を占めており,再入者総数(8-3-2-8図<2>)の同年齢層における構成比(32.3%)と比べて顕著に高い。また,30歳未満の者では,再犯期間が1年未満の者の構成比(32.8%)が再入者総数(8-3-2-8図<2>)の同年齢層における構成比(25.9%)と比べて高い。
前刑罪名が詐欺の再入者のうち,再入罪名も詐欺の者(226人)の再犯期間別構成比について見ると,前刑罪名が詐欺の再入者全体(8-3-2-8図<1>)と比べて,再犯期間が1年未満の者の構成比は,30歳未満の者(23.8%)が低い一方,30歳代の者(39.2%),40歳代の者(36.0%),50~64歳の者(57.8%)及び65歳以上の者(77.5%)は高い(法務省大臣官房司法法制部の資料による。)。
令和2年の詐欺の入所受刑者の保護処分歴別構成比を初入者・再入者別に見るとともに,これを年齢層別に見ると,8-3-2-9図のとおりである。保護処分歴を有する者の構成比は,初入者及び再入者のいずれも若い年齢層の者ほど高い傾向にあり,特に,再入者のうち30歳未満の者の構成比は,入所受刑者全体(61.8%。5-2-3-3図参照)と比べて高い。
令和2年の詐欺の入所受刑者の暴力団関係者率(第4編第3章第2節3項(2)参照)を初入者・再入者別に見ると,8-3-2-10図のとおりである。
平成23年及び28年の詐欺の出所受刑者について,出所年を含む5年間又は10年間における再入率(第5編第2章第3節2項参照)を出所事由別(仮釈放又は満期釈放等の別をいう。以下同じ。)に見ると,8-3-2-11図のとおりである。5年以内及び10年以内の各再入率は,満期釈放者等(同項参照)及び仮釈放者のいずれにおいても,出所受刑者全体(5-2-3-6図参照)と比べて低い。一方,いずれの出所年の出所受刑者においても,満期釈放者等は,仮釈放者よりも再入率が相当高く,出所受刑者全体(5-2-3-6図参照)と比べて,その差は顕著である。なお,28年の詐欺の出所受刑者について,各年の再入所者に占める再入罪名別構成比を見ると,再入罪名が詐欺の者の構成比はそれぞれ62.2%(28年),52.1%(29年),42.4%(30年),44.3%(令和元年),20.5%(2年)と低下傾向にあるが,各年とも再入罪名が窃盗の者は約2~3割と,一定の割合を占めている(法務省大臣官房司法法制部の資料による。)。
平成28年の詐欺の出所受刑者について,5年以内の再入率を入所度数別,男女別(初入者・再入者別)及び年齢層別に見ると,8-3-2-12図のとおりである。入所度数別では,3度以上の者は,2度の者よりも再入率が相当高く,出所受刑者全体(5-2-3-7図<1>参照)と比べて,その差は顕著である。男女別(初入者・再入者別)では,初入者及び再入者のいずれにおいても,男性の方が女性よりも再入率が高い傾向にあり,年齢層別では,30歳未満の者の5年以内再入率が他の年齢層と比較して最も低い。
平成12年から令和元年の各年の詐欺の出所受刑者について,2年以内再入率の推移を出所事由別に見ると,8-3-2-13図<1>のとおりである。満期釈放者等の2年以内再入率は,平成12年に53.7%を記録した後,出所年による変動はあるものの,低下傾向にあり,令和元年は22.5%と,平成12年と比べて31.2pt低下している。仮釈放者の2年以内再入率は,12年に13.5%を記録した後,低下傾向にあり,令和元年は3.2%と,平成12年と比べて10.3pt低下している。
平成9年から28年の各年の詐欺の出所受刑者について,5年以内再入率の推移を出所事由別に見ると,8-3-2-13図<2>のとおりである。満期釈放者等の5年以内再入率は,12年に71.6%を記録した後,低下傾向にあり,28年は41.8%と,12年と比べて29.9pt低下している。仮釈放者の5年以内再入率は,9年に33.2%を記録した後,低下傾向にあり,28年は12.5%と,9年と比べて20.7pt低下している。
2年以内再入率及び5年以内再入率について,出所受刑者総数(5-2-3-9図<1><2>参照)と比べると,満期釈放者等及び仮釈放者のいずれにおいても,最近20年間で大幅に低下している。
平成28年から令和2年までにおける詐欺の少年院入院者の保護処分歴別構成比を男女別に見ると,8-3-2-14図のとおりである。令和2年の少年院入院者総数(5-2-5-2図<2>参照)と比べると,女子では大きな違いは見られないが,男子では保護処分歴を有する者の構成比が低い。また,詐欺の少年院入院者の保護処分歴別構成比の推移(最近10年間)を見ると,男子の保護処分歴を有する者の構成比は,平成23年には約7割であったが,26年に約5割に低下し,その後はおおむね5割台後半から6割台前半の間で推移している(CD-ROM参照)。