平成13年から令和2年までの間に保護観察が終了した仮釈放者(全部実刑者)及び保護観察付全部執行猶予者について,<1>再処分率(保護観察期間中に再犯により刑事処分(起訴猶予の処分を含む。刑事裁判については,その期間中に確定したものに限る。)を受けた者の占める比率をいう。),<2>取消率(再犯又は遵守事項違反により仮釈放又は保護観察付全部執行猶予が取り消された者の占める比率をいう。)及び<3>取消・再処分率(取消又は再処分のいずれかに該当する者(双方に該当する場合は,1人として計上される。)の占める比率をいう。)の推移を見ると,5-2-4-2図のとおりである。
取消率は,仮釈放者(全部実刑者)については,平成20年以降4%台で推移していたが,令和元年に3.9%となり,2年は4.5%と再び4%台になった。保護観察付全部執行猶予者については,近年25%前後で推移していたが,平成30年から21%前後に低下し,令和2年は21.9%であった。なお,仮釈放者の再処分率が極めて低いのは,仮釈放者が再犯に及んで刑事裁判を受けることになった場合であっても,仮釈放期間中には刑事裁判が確定しないことが多いことなどが関係していると考えられる。
令和2年に保護観察が終了した仮釈放者(一部執行猶予者)1,243人のうち,仮釈放を取り消された者は38人であり,同年に保護観察が終了した保護観察付一部執行猶予者960人のうち,刑の一部執行猶予が取り消された者は321人であった(CD-ROM参照)。
仮釈放者(全部実刑者)及び保護観察付全部執行猶予者の取消・再処分率の推移を,男女別・年齢層別・罪名別・就労状況別に見ると,5-2-4-3図のとおりである(仮釈放者(一部執行猶予者)及び保護観察付一部執行猶予者についてはCD-ROM参照)。
仮釈放者(全部実刑者)を男女別に見ると,男性は,平成13年(7.7%)から低下傾向にあり,令和2年は4.8%であった。女性は,平成16年(6.5%)をピークに低下傾向にあり,令和2年は3.8%であった。年齢層別に見ると,近年年齢層による差は1pt前後で推移しており,同年は,50~64歳及び65歳以上の年齢層がそれ以外の年齢層よりも高かった(仮釈放者(一部執行猶予者)については,同年の取消・再処分率は,30歳未満の年齢層(4.4%)がそれ以外の年齢層よりも高かった(CD-ROM参照)。)。また,罪名別に,窃盗,覚醒剤取締法違反及びその他の罪名で比較してみると,同年は,窃盗及び覚醒剤取締法違反の取消・再処分率がいずれもその他の罪名より高いものの,平成13年と比べると,窃盗は4.4pt,覚醒剤取締法違反は2.9pt,それぞれ低下している。保護観察終了時の就労状況別に見ると,保護観察終了時に無職であった者の取消・再処分率は,有職であった者と比べ,一貫して高いが,令和2年(9.8%)は平成13年(18.5%)と比べて著しく低下している。
保護観察付全部執行猶予者では,男女別に見ると,平成13年は男性が38.2%,女性が29.7%であったところ,令和2年は男性(27.3%)と女性(26.4%)が同程度の水準となっている(保護観察付一部執行猶予者について見ると,同年は男性が37.3%,女性が25.7%であった(CD-ROM参照)。)。年齢層別に見ると,30歳未満の年齢層の取消・再処分率が一貫して高く,平成13年は44.3%,令和2年は35.5%であった。罪名別に見ると,窃盗及び覚醒剤取締法違反がその他の罪名と比べ一貫して高く,同年では窃盗は12.2pt,覚醒剤取締法違反は10.1ptその他の罪名よりもそれぞれ高かった。保護観察終了時の就労状況別に見ると,保護観察終了時に無職であった者は,有職であった者と比べ,取消・再処分率が一貫して高い(同年における保護観察付一部執行猶予者の取消・再処分率は,保護観察終了時に無職であった者は50.6%,有職であった者は27.5%であった(CD-ROM参照)。)。
5-2-4-4表は,平成23年から令和2年に保護観察が開始された仮釈放者(全部実刑者・一部執行猶予者)及び保護観察付全部・一部執行猶予者について,保護観察が開始された年ごとに,保護観察が開始された日から5年以内に再犯又は遵守事項違反により仮釈放又は刑の執行猶予の言渡しを取り消された者の人員を見たものである。平成30年から令和2年の各年に保護観察が開始された保護観察付全部・一部執行猶予者について見ると,各年とも,保護観察付一部執行猶予者の方が保護観察付全部執行猶予者に比べて,2年末までに刑の執行猶予の言渡しを取り消された者の比率が高い。例えば,平成30年に保護観察が開始された保護観察付一部執行猶予者(974人)が令和2年末までに刑の一部執行猶予の言渡しを取り消された割合(28.5%)は,平成30年に保護観察が開始された保護観察付全部執行猶予者(2,481人)が令和2年末までに刑の全部執行猶予の言渡しを取り消された割合(18.9%)よりも9.7pt高い。