再入者は,初入者よりも,違法薬物の入手のための犯罪の経験がある者の割合,違法薬物の影響下での犯罪の経験がある者の割合,違法薬物の乱用下での運転・無免許運転の経験がある者の割合が顕著に高かった。更なる犯罪や交通事故の発生による社会の被害を防止するためにも,薬物の乱用を防止する必要性は高い。
再入者は,覚醒剤使用によるデメリットとして,周囲からの信頼喪失,家族や交際相手との人間関係悪化を挙げる者の割合が初入者よりも顕著に高く,覚醒剤の断薬経験がある者の断薬理由として,家族や交際相手等の理解・協力を挙げる者の割合が初入者よりも高かった。身近な者のサポートが断薬や再乱用防止にとって重要であることがうかがえる。
薬物乱用に関する関係機関について,初入者は,その存在を知らなかった者の割合が,保健機関については5割を超え,自助グループについては約4割であるなど,再入者より高かった。他方,再入者は,いずれの関係機関についても,その存在を知っていながら支援を受けたことがない者の割合が6~8割に及んでいた。支援を受けたことがない理由として,いずれの関係機関についても,初入者・再入者共に,自力でやめられると思ったこと,支援を受けられる場所や連絡先を知らなかったこと,支援内容がよく分からなかったことを挙げた者の割合が高かったが,再入者については,これに加え,支援を受けてもやめられないと思ったことを挙げた者の割合が高かった。各関係機関に対する認識やイメージも様々であり,関係機関に係る情報提供や,支援を受ける動機付けを行う際には,個々の持つ情報・認識・イメージ等を踏まえたアプローチが必要といえる。
なお,薬物依存の重症度については,初入者は,再入者に比べて「軽度」の者の割合が高かった。しかしながら,集中治療の対象の目安とされる「相当程度」以上の者の割合については,再入者が5割近くを占める一方,初入者も4割近くを占めていた。アルコールの問題やギャンブルの依存が疑われる者の割合も,初入者と再入者との間にほとんど差はみられなかった。入所度数の多寡にかかわらず,依存症治療のニーズを持つ者や複合的な問題を抱えている者が相当数いることが示唆されており,再乱用防止の指導に当たっては,こういったニーズや問題を丁寧に把握して対応することが重要であると思われる。