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令和2年版 犯罪白書 第7編/第8章/第3節/1

1 調査対象者全体の特徴

覚醒剤事犯者には,20歳未満から薬物の乱用を開始し,薬物犯罪を繰り返している者が少なくない。刑事施設への入所度数が5~9度の者は21.2%,10度以上の者も3.3%いた。また,覚醒剤以外では大麻や有機溶剤の経験率が高く,その他の多くの薬物の経験率についても,一般住民を対象とした調査結果との単純比較において顕著に高かった。直近1年間の1月当たりの覚醒剤使用日数は,5日以下の者が約6割を占める一方,16日以上の者も約2割を占めていた。薬物依存の重症度では,集中治療の対象の目安とされる「相当程度」以上の者が5割近くを占めており,覚醒剤事犯者が抱える薬物乱用の問題は相当に深刻であることが示唆された。これらのことは,覚醒剤事犯者が,犯罪を繰り返している者であると同時に,その一部については,依存症治療のニーズを持つ者であることも示唆している。加えて,アルコールの問題やギャンブル依存が疑われる者がそれぞれ全体の4割前後を占めた。

違法薬物の入手のための犯罪の経験を有する者が23.5%,違法薬物の影響下での犯罪(薬物犯罪及び交通事故を除く。以下この節において同じ。)の経験を有する者が6.5%をそれぞれ占め,薬物の乱用が現実に更なる犯罪を引き起こしている実態も明らかになった。