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令和2年版 犯罪白書 第7編/第8章/第2節/2

2 再犯防止に向けた取組の進展

我が国においては,平成の半ば以降,再犯防止対策の重要性についての認識が深まっていき,平成20年代には,各種の再犯防止対策が講じられた。これらの対策の中で,薬物事犯者の再犯防止は重要な課題と認識され,刑事司法手続の処遇段階においても,薬物事犯者の再犯防止に向けた取組がなされるようになった。すなわち,刑事施設においては,特別改善指導の一類型である薬物依存離脱指導の標準プログラムの複線化,少年院においては,特定生活指導の一類型である薬物非行防止指導の実施,地方更生保護委員会においては,薬物犯罪の受刑者特有の問題性に焦点を当てた調査(アセスメント),保護観察所が行う生活環境の調整に対する指導・助言・連絡調整の実施,保護観察所においては,生活環境の調整の充実・強化,薬物処遇ユニットの設置,類型別処遇,専門的処遇プログラムの一類型である薬物再乱用防止プログラム,自発的意思に基づく簡易薬物検出検査等の実施,薬物依存回復訓練の委託等を通じて,薬物事犯者に対する処遇の充実・強化が図られている。また,「薬物依存のある刑務所出所者等の支援に関する地域連携ガイドライン」に基づき,刑事施設,地方更生保護委員会,保護観察所,地方公共団体,医療,福祉等関係機関,民間支援団体等が互いに緊密に連携して,刑事施設入所中から,刑事施設出所後の保護観察,保護観察終了後の支援までを含め,薬物依存者本人及びその家族に対するシームレスな支援を行うことができるようにしている。平成28年には刑の一部執行猶予制度の運用が開始された。これにより,刑事施設における処遇に引き続き,薬物の誘惑のあり得る社会内においても,保護観察を通じて施設内における処遇効果を維持・強化することが可能となった。薬物事犯者の再犯防止や社会復帰に向けた取組については,「薬物依存者・高齢犯罪者等の再犯防止緊急対策~立ち直りに向けた“息の長い”支援につなげるネットワーク構築~」(28年7月犯罪対策閣僚会議決定),「再犯防止推進計画」(29年12月閣議決定),「第五次薬物乱用防止五か年戦略」(30年8月薬物乱用対策推進会議策定)等にも盛り込まれている。