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令和2年版 犯罪白書 第7編/第8章/第1節/1

第1節 薬物犯罪・非行の動向等
1 検挙状況等

刑法犯の認知件数が平成14年をピークに減少の一途をたどっているのに対し,薬物犯罪(覚醒剤取締法,大麻取締法,麻薬取締法及びあへん法の各違反をいう。以下この項において同じ。)の検挙人員は,長期的には減少傾向を示しているものの,その減少幅は刑法犯の認知件数と比較して大きくはない。しかしながら,薬物犯罪の検挙人員の中で最も高い割合を占める覚醒剤取締法違反の検挙人員は,28年以降減少し続け,令和元年には,前年から13.0%も減少し,昭和50年以来44年ぶりに1万人を下回っており,令和2年以降の動向が注目される。近年,刑法犯の検挙人員に占める高齢者の比率の上昇が進んでいる。覚醒剤取締法違反についても,若年層の検挙人員は減少傾向を示す一方で,50歳以上の層の検挙人員が増加傾向ないし横ばい状態で推移している。同法違反以外の薬物犯罪は,同法違反と比較すると,年や時期による変動が大きい。近年の動きを見ると,大麻取締法違反の検挙人員は,平成21年をピークに,翌年から減少に転じたものの,26年からは毎年増加し続け,令和元年には昭和46年以降初めて4,000人を超えた。その一方で,危険ドラッグに係る犯罪の検挙人員は,平成24年から27年にかけて増加し,翌年から減少し続けている。近年の大麻取締法違反の検挙人員の著しい増加には,少年を含む若年層の検挙人員の増加が大きく影響している。

覚醒剤取締法違反の検挙人員総数に占める暴力団構成員等の比率は,平成27年以降低下傾向にあるが,いまだ4割強と高い。同法違反の検挙人員総数に占める外国人の比率は,22年以降10%未満で推移している。しかしながら,令和元年には,同法違反の検挙人員のうち営利犯で検挙された者に占める外国人の比率は約4割,密輸入事犯で検挙された者に占める外国人の比率は約7割強と高い。近年我が国における覚醒剤の押収量が増加し,令和元年には平成元年以降最多を記録した。また,令和元年には,覚醒剤の密輸入事犯の摘発件数が急増した。