前の項目 次の項目       目次 図表目次 年版選択

令和2年版 犯罪白書 第7編/第6章/第1節/2

2 調査内容

質問紙による回答又は刑事施設からの情報提供により,今回受刑することに至った事件(以下この章において「調査対象事件」という。)の内容,薬物乱用状況,覚醒剤使用に対する認識,受刑歴,受刑前の生活状況,心身の状況等について調査を実施した。また,調査対象者の薬物乱用に関連する多様な問題を捉えるため,次の事項についても,各種スクリーニング尺度等を用いて調査した。

(1)薬物依存の重症度

薬物依存の重症度を把握するため,The Drug Abuse Screening Testの20項目版(DAST-20)の日本語版を用いて,DAST合計得点(0~20点)を算出し,DAST合計得点1~5点を「軽度」,6~10点を「中度」,11~15点を「相当程度」,16点以上を「重度」に分類した。DAST-20は,薬物乱用に関連する問題を幅広く捉えることができる評価尺度であり,必要な対応について,「軽度」は簡易的なカウンセリング,「中度」は外来治療とされ,「相当程度」及び「重度」は集中治療の対象の目安とされる。

(2)飲酒(アルコール)の問題

飲酒経験について尋ねた上で,経験があると回答した者に対し,The Alcohol Use Disorders Identification Test (AUDIT)の日本語版のうち,飲酒に関連する10項目の質問から構成されるCore AUDITを用いて,AUDIT合計得点(0~40点)を算出した。AUDIT日本語版は,アルコール依存症のみならず,健康に有害であるか,あるいは将来障害を招くと考えられる飲酒も含めてスクリーニングを行うものである。支援方法を検討する観点から,合計得点0~7点を低リスク又は非飲酒状態としてアルコール教育が適切な「レベル1」,合計得点8~15点を有害なアルコール使用が疑われ簡単な助言が推奨される「レベル2」,合計得点16~19点を簡単な助言に加え簡易カウンセリングと継続モニタリングが推奨される「レベル3」,合計得点20~40点を診断と治療のため専門家への紹介が必要な「レベル4」に分類し,このうち,合計得点8点以上を「問題飲酒群」とした。

(3)ギャンブルの問題

ギャンブル経験について尋ねた上で,経験があると回答した者に対し,The South Oaks Gambling Screen (SOGS)の日本語版の短縮版を用いて,SOGS合計得点(0~7点)を算出した。同短縮版は,ギャンブルに関連する経験の有無に基づいて病的ギャンブリングのスクリーニングを行うもので,合計得点2点以上をギャンブル依存が疑われる者とした。

(4)小児期逆境体験

小児期逆境体験(ACE:Adverse Childhood Experiences)は,心身の健康に様々な影響を及ぼすとされ,犯罪・非行との関連も指摘されている。18歳までの小児期逆境体験として,家族の飲酒問題,家族の違法薬物使用,家族の精神疾患の罹患歴,家族の自殺企図歴,親との離死別,家族の服役歴,母親への父親からの暴力,ネグレクト(物理的・情緒的)及び虐待(身体的・心理的・性的)に関する経験の有無を調査した。