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令和2年版 犯罪白書 第7編/第2章/第2節/1

1 オピオイド

オピオイドは,オピオイド受容体に作用し,鎮痛や多幸感を引き起こす物質であり,けし(パパヴェル・ソムニフェルム・エル等)に由来するモルヒネ,コデイン等のあへんアルカロイド(オピエート)及びフェンタニル等の合成されたオピエート類似物質のほか,エンドルフィン等の体内で合成される化合物がある。

けしの液汁を凝固させた生あへんや,これを加工して得られるあへん煙は,モルヒネやコデインを含有し,これらと同様の作用と毒性を有する。

モルヒネは,鎮痛・鎮咳(がい)・麻酔作用があり,がんの疼(とう)痛緩和等に使われる。コデインは,鎮咳・鎮痛作用があり,がんの疼痛緩和のほか,咳(せき)止め等に用いられる。モルヒネ及びコデインは医療的用途に用いられるオピオイドであるが,非医療的用途でも乱用されている。

ヘロイン(ジアセチルモルヒネ)は,モルヒネを原料として化学的に合成される半合成のオピオイドである。モルヒネよりも精神及び身体に与える影響が強く,はるかに危険性が高いことから,我が国においては研究目的以外の製造,施用,所持等が禁止されている。白色又は茶色の粉末のほか,固形状のものもあり,鼻からの吸引又は吸煙のほか,液体に溶かして注射するなどの方法により摂取される。

合成オピオイドには,フェンタニルメサドン等があり,鎮痛,がんの疼痛緩和等に用いられるほか,メサドンはヘロイン等の薬物依存の治療に使われることもある。

オピエートや合成オピオイドは,多幸感に続く無気力,不快感等,判断力・集中力の低下及び眠気のほか,悪心・おう吐,便秘,縮瞳等を引き起こし,多量に摂取すると昏(こん)迷,昏(こん)睡又は呼吸抑制を引き起こし,死に至ることもある。強い精神的依存性があるほか,離脱により不快感,悪心・おう吐,筋肉痛,下痢,流涙,鼻漏,あくび,発熱,鳥肌立ちを伴う寒気発作,発汗,不眠等の症状が生じるために,身体的依存性も強い。また,使用を繰り返すことにより耐性が形成される。