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令和元年版 犯罪白書 第4編/第5章/第1節

第5章 サイバー犯罪
第1節 不正アクセス行為等

4-5-1-1図は,不正アクセス行為(不正アクセス禁止法11条に規定する罪をいう。)の認知件数の推移(同法が施行された平成12年以降)である(同法の制定及び改正状況については,第1編第1章第2節5項(1)参照)。不正アクセス行為の認知件数については,増減を繰り返しながら,26年の3,545件をピークとしてその後減少していたものの,30年は増加に転じ,1,486件(前年比23.6%増)であった。

4-5-1-1図 不正アクセス行為 認知件数の推移
4-5-1-1図 不正アクセス行為 認知件数の推移
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不正アクセス行為の認知件数の推移について,被害を受けた特定電子計算機(ネットワークに接続されたコンピュータをいう。)のアクセス管理者(特定電子計算機を誰に利用させるかを決定する者をいう。)別の内訳を見ると,各年に最も多かったのは,「一般企業」(平成13年・16年・23年~30年)又は「プロバイダ(インターネットに接続する機能を提供する電気通信事業者をいう。)」(12年・14年・15年・17年~22年)であった(30年は,「一般企業」が1,314件,「大学,研究機関等」が161件,「行政機関等」が6件,「プロバイダ」が4件であった。)。また,不正アクセス行為の認知の端緒別の内訳を見ると,各年に最も多かったのは,「警察活動」(12年~15年・18年~22年),「アクセス管理者からの届出」(25年~28年)又は「利用権者(ネットワークを通じて特定電子計算機を利用することについて,当該特定電子計算機のアクセス管理者の許諾を得た者をいう。)からの届出」(16年・17年・23年・24年・29年・30年)であった(30年は,「利用権者からの届出」が852件,「アクセス管理者からの届出」が345件,「警察活動」が269件,「発見者からの通報」が16件であった。)。さらには,不正アクセス行為後の行為について,各年に最も多かったのは,「ホームページの改ざん等」(12年・13年・15年),「オンラインゲームの不正操作」(16年・23年・24年),「インターネット・オークションの不正操作(他人になりすましての出品等)」(14年・17年~21年),「情報の不正入手(個人情報の不正入手,メールの盗み見等)」(22年・30年)又は「インターネットバンキングの不正送金」(25年~29年)であった(30年は,「メールの盗み見等の情報の不正入手」が385件,「インターネットバンキングでの不正送金等」が330件,「オンラインゲーム・コミュニティサイトの不正操作」が199件,「仮想通貨交換業者等での不正送信」が169件であった。)(警察庁生活安全局,総務省サイバーセキュリティ統括官及び経済産業省商務情報政策局の資料による。)。

コンピュータ・電磁的記録対象犯罪(電磁的記録不正作出・毀棄等,電子計算機損壊等業務妨害,電子計算機使用詐欺及び不正指令電磁的記録作成等),支払用カード電磁的記録に関する罪(刑法第2編第18章の2に規定する罪)及び不正アクセス禁止法違反の検挙件数の推移(平成12年以降)は,4-5-1-2表のとおりである。コンピュータ・電磁的記録対象犯罪の検挙件数について,年によりばらつきはあるが,全体として増加傾向にあり,その内訳は一貫して電子計算機使用詐欺が最も多い。支払用カード電磁的記録に関する罪の検挙件数については,17年以降減少傾向にあったが,28年に急増した後,再び減少に転じている。不正アクセス禁止法違反の検挙件数の推移については,21年の2,534件をピークとして減少し,30年は564件(前年比13.0%減)であった。

なお,罪名ごと(罪名別の統計が存在するものに限る。)の検察庁終局処理人員は,CD-ROM資料4-6のとおりである。このうち,不正アクセス禁止法違反の起訴率について,平成13年は88.6%であったが,その後低下傾向にあり,30年は28.5%(前年比10.2pt低下)であった。

4-5-1-2表 コンピュータ・電磁的記録対象犯罪等 検挙件数の推移
4-5-1-2表 コンピュータ・電磁的記録対象犯罪等 検挙件数の推移
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