平成期におけるサイバー犯罪の動向については,第4編第5章参照。
電気通信回線を通じて行われる電子計算機に係る犯罪の防止及びアクセス制御機能により実現される電気通信に関する秩序の維持を図り,高度情報通信社会の健全な発展に寄与するため,平成11年8月,不正アクセス行為の禁止等に関する法律(平成11年法律第128号。以下この節において「不正アクセス禁止法」という。)が成立し,不正アクセス行為やこれを助長する行為が禁止されるとともに,これらについての罰則や再発防止のための都道府県公安委員会による援助措置等が定められた(12年7月全面施行)。
サイバー犯罪の危険性の急速な増大に伴い,不正アクセス防止対策を強化することを目的として,平成24年法律第12号による改正では,他人のIDやパスワードの不正取得等の罪が新設され,不正アクセス行為に対する法定刑が引き上げられるなど罰則が強化された(平成24年4月施行)。
一時に多数の者に対してされる特定電子メール(電子メールの送信をする者が自己又は他人の営業につき広告・宣伝を行うための手段として送信する電子メール)の送信等による電子メールの送受信上の支障を防止する必要性から,電子メールの利用についての良好な環境の整備を図り,高度情報通信社会の健全な発展に寄与するため,平成14年4月,特定電子メールの送信の適正化等に関する法律(平成14年法律第26号)が成立し,特定電子メールの送信の適正化のための措置が定められ,送信に用いた電子メールアドレス等の送信者情報を偽って特定電子メールを送信するなどの行為についての罰則が新設された(同年7月施行)。
インターネット異性紹介事業の利用に起因する児童買春その他の犯罪から児童を保護し,もって児童の健全な育成に資することを目的として,平成15年6月,インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律(平成15年法律第83号。いわゆる出会い系サイト規制法)が成立し,児童を性交等の相手方となるように誘引する行為等に関する罰則が新設された(同年12月全面施行)。
平成20年法律第52号による改正では,インターネット異性紹介事業が都道府県公安委員会への届出制とされ,届出をしないで同事業を行った者についての罰則が新設された(平成20年12月施行)。