保護観察所では,保護観察対象者が,適切な医療,食事,住居その他の健全な社会生活を営むために必要な手段を得ることができないため,その改善更生が妨げられるおそれがある場合は,医療機関,福祉機関等から必要な援助を得るように助言・調整を行っているが,その援助が直ちに得られないなどの場合,保護観察対象者に対して,食事,衣料,旅費等を給与若しくは貸与し,又は宿泊場所等の供与を更生保護施設に委託するなどの緊急の措置(応急の救護)を講じている。
また,満期釈放者,保護観察に付されない全部・一部執行猶予者,起訴猶予者,罰金又は科料の言渡しを受けた者,労役場出場者,少年院退院者・仮退院期間満了者等に対しても,その者の申出に基づいて,応急の救護と同様の措置である更生緊急保護の措置を講じている。刑事上の手続等による身体の拘束を解かれた後6月を超えない範囲内(特に必要があると認められるときは,更に6月を超えない範囲内)において行うことができる。
3-1-5-14表は,平成元年・15年・30年における応急の救護等(元年・15年は,救護・援護。なお,補導援護としての措置を含む。以下この節において同じ。)及び更生緊急保護(元年は更生保護)の措置の実施状況を見るとともに,30年については,これらを更に対象者の種類別に見たものである。更生緊急保護の措置は,14年に更生保護事業法等の一部を改正する法律が施行され(第1編第2章第4節2項(3)参照),その対象が満期釈放者,保護観察に付されない執行猶予者,起訴猶予者以外にも広がり,30年の保護観察所において直接行う保護は,元年の約2.1倍に増加し,30年の更生保護施設等へ宿泊を伴う保護の委託は,元年の約1.6倍に増加している。対象者の種類別で見ると,30年の応急の救護等では,仮釈放者が大半を占めており,更生緊急保護では全部実刑の刑の執行終了者が最も多かった。
起訴猶予者については,その再犯防止に資するため,平成25年10月から,一部の保護観察所と検察庁とが連携した更生緊急保護の事前調整が試行的に実施され,27年度からは,より実効性のある支援の実施を目指し,検察庁と連携の上,特に支援の必要性が高い者に対し,全国の保護観察所において,継続的かつ重点的に生活指導等を行った上で福祉サービスの調整や就労支援等を行う「起訴猶予者に係る更生緊急保護の重点実施等の試行」が実施されてきた。30年度からは,保護観察所に,入口支援に特化した業務を行う特別支援ユニットが設置され,「保護観察所が行う入口支援」が開始された。この入口支援は,更生緊急保護の措置として福祉的支援等が行われるもので,高齢又は障害により福祉サービス等を必要とする,起訴猶予者,保護観察に付されなかった全部執行猶予者,罰金等を言い渡された者等が対象とされており,本人の希望に基づき,地方公共団体や検察庁(起訴猶予者及び略式命令により罰金等を言い渡された者に限る。)と連携しながら,継続的生活指導が行われる。同年度に実施された入口支援の対象者数は113人であり,このうち103人については,検察庁との事前協議が行われている。入口支援の内容は,更生保護施設又は自立準備ホームへの入所支援78人,生活保護申請支援32人,就労支援20人,障害者福祉に係るサービスの利用支援11人等であった。なお,31年4月現在,22庁の保護観察所に特別支援ユニットが設置されている(法務省保護局の資料による。検察庁との連携による入口支援については,本章第2節4項コラム6参照)。