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平成29年版 犯罪白書 第5編/第1章/2

2 再犯防止推進法に基づく再犯防止対策の推進
(1)再犯防止推進法の概要

我が国における再犯防止対策は,近年,総合対策の四つの重点施策を始めとして,関係機関や民間団体等の連携により,様々な施策・取組が積極的に展開されてきたが,党派を超えた国会議員により,関係省庁のみならず,地方公共団体をも再犯防止対策の実施主体と位置付けるなどの新たな視点から,再犯の防止等を推進するための法律の制定に向けた議論がなされた結果,平成28年12月7日,国会において,議員立法により,再犯の防止等の推進に関する法律(平成28年法律第104号。以下「再犯防止推進法」という。)が成立し,同月14日に施行された。

再犯防止推進法は,再犯の防止等に関する施策に関し,基本理念を定め,国及び地方公共団体の責務を明らかにするとともに,再犯の防止等に関する施策の基本となる事項を定めること等を目的とし,国は,再犯の防止等に関する施策を総合的に策定し,実施する責務を,地方公共団体は,国との適切な役割分担を踏まえて,その地方公共団体の地域の状況に応じた再犯の防止等に関する施策を策定し,実施する責務をそれぞれ有するとした上で,両者間の連携義務に加え,民間団体等との連携協力の確保に努める義務を規定している(第7編第1章参照)。また,同法は,再犯防止のための国の基本的施策として,犯罪をした者等の特性を踏まえた指導・支援,就労支援・就業機会の確保,住居の確保,保健医療・福祉サービスの提供といった施策に加え,関係機関における体制や再犯防止関係施設の整備といった再犯防止を推進するための人的・物的基盤の整備,施策の実施状況と効果の検証,効果的な処遇の在り方等に関する調査・研究の推進,社会内における適切な指導・支援,国民の理解の増進,民間団体等に対する援助等を規定し,その実施に関する方針等を定めている。

再犯防止推進法の下,政府は,再犯の防止等に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため,再犯の防止等に関する施策の推進に関する計画(以下「再犯防止推進計画」という。)を定めなければならないこととされ,都道府県・市町村も,再犯防止推進計画を勘案して,当該都道府県・市町村における再犯の防止等に関する施策の推進に関する計画(地方再犯防止推進計画)を定める努力義務が課されている。

(2)再犯防止推進計画の策定に向けた取組

犯罪対策閣僚会議においては,再犯防止推進法の施行を受け,平成28年12月,前記の「再犯防止対策ワーキングチーム」が廃止され,新たに法務大臣を議長とし,関係省庁の局長等で構成される「再犯防止対策推進会議」が設置された。

法務省では,平成29年2月,「再犯防止推進計画の案」に掲げる事項等を検討するため,法務副大臣を議長とし,関係省庁の課長等と外部有識者で構成される「再犯防止推進計画等検討会」を設置した。以後,同検討会では,<1>就労・住居の確保等,<2>保健医療・福祉サービスの利用の促進等,<3>学校等と連携した修学支援の実施等,<4>効果的な指導の実施等,<5>民間ボランティアの活動の促進等,<6>広報・啓発活動の推進等,<7>地方公共団体における推進体制の整備等,<8>関係機関の人的・物的体制の整備等について検討し,同年12月中の再犯防止推進計画の閣議決定を目指して作業を進めている。