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平成29年版 犯罪白書 第4編/第6章/第3節/1

第3節 ストーカー犯罪等
1 ストーカー犯罪

ストーカー規制法は,平成12年,ストーカー行為(同一の者に対し,恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で,恋愛感情等の対象者又はその配偶者等に対し,同法に規定された「つきまとい等」の行為を反復してすること)を処罰する等ストーカー行為等について必要な規制を行うとともに,その相手方に対する援助の措置等を定める目的で制定された。

警察署長等は,申出を受けた場合に,つきまとい等をして相手方に不安を覚えさせる行為があり,かつ,更に反復のおそれがあると認めるときは,当該行為をした者に対し,更に反復して当該行為をしてはならない旨を警告することができる。公安委員会は,警告を受けた者が当該警告に従わずにつきまとい等をして相手方に不安を覚えさせる行為をした場合において,更に反復のおそれがあると認めるときは,申出又は職権により,当該行為をした者に対し,更に反復して当該行為をしてはならないことや更に反復して当該行為が行われることを防止するために必要な事項を命ずることができる(禁止命令等)とされていたが,平成28年12月の同法改正(平成28年法律第102号)により,急に加害者の行為が激化して重大事件に発展するおそれがあるなどのストーカー事案の特徴を踏まえて,警告の存在を要件とせずに直接禁止命令等をすることが可能となった(29年6月14日施行)。

ストーカー規制法による警告等の件数の推移(最近10年間)は,4-6-3-1表のとおりである。平成28年の警告の件数は3,562件(前年比187件増)で,26年以降3,000件を超えている。禁止命令等の件数は,25年以降100件を超えており,28年は173件(同28件増)であった。

4-6-3-1表 ストーカー規制法による警告等の件数の推移
4-6-3-1表 ストーカー規制法による警告等の件数の推移
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ストーカー規制法違反として,ストーカー行為又は禁止命令違反行為などが処罰対象であるほか,ストーカー行為をしている者による行為が殺人,傷害等の刑法その他の法律上の犯罪に該当する場合は,それらによっても処罰されることになる。ストーカー事案の検挙件数の推移(最近10年間)は,4-6-3-2図のとおりである。

ストーカー規制法違反は,平成24年から著しく増加しており,28年は23年(205件)の約3.8倍であり,他法令による検挙件数の総数も,24年から著しく増加して26年から高止まりの状況となり,28年は23年(786件)の約2.4倍であった(CD-ROM参照)。

平成25年7月のストーカー規制法改正により(平成25年法律第73号),拒まれたにもかかわらず,電子メールを連続して送信する行為が,「つきまとい等」に追加され(同月23日施行),28年12月の同法改正により,住居等の付近をみだりにうろつく行為,拒まれたにもかかわらず,連続してSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)のメッセージ機能等を利用してメッセージを送信する行為,ブログ等の個人のページにコメント等を書き込む行為などが「つきまとい等」に追加されるとともに,ストーカー行為罪の非親告罪化,同法違反についての罰則の引上げがなされた(29年1月3日施行)。

4-6-3-2図 ストーカー事案の検挙件数の推移(罪名別)
4-6-3-2図 ストーカー事案の検挙件数の推移(罪名別)
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