更生保護施設は,主に保護観察所から委託を受けて,住居がなかったり,頼るべき人がいないなどの理由で直ちに自立することが難しい保護観察又は更生緊急保護の対象者を宿泊させ,食事を給与するほか,就職援助,生活指導等を行う施設である。
平成29年4月1日現在,全国に103の施設があり,更生保護法人により100施設が運営されているほか,社会福祉法人,特定非営利活動法人及び一般社団法人により,それぞれ1施設が運営されている。その内訳は,男性の施設89,女性の施設7及び男女施設7である。収容定員の総計は2,369人であり,男性が成人1,868人と少年324人,女性が成人128人と少年49人である(法務省保護局の資料による。)。
平成28年における更生保護施設への委託実人員は,8,095人(うち新たに委託を開始した人員6,329人)であった(保護統計年報による。)。各年における更生保護施設へ新たに委託を開始した人員の推移(最近20年間)は,2-5-5-2図のとおりである。
平成28年度における更生保護施設退所者(応急の救護等及び更生緊急保護のほか,任意保護(更生緊急保護の期間を過ぎた者に対する保護等について,国からの委託によらず,被保護者の申出に基づき,更生保護事業を営む者が任意で保護すること)による者を含む。)の更生保護施設における在所期間別構成比は,2-5-5-3図のとおりである。87.2%の者が6月未満で退所している。平均在所日数は79.8日であった。退所先については,借家(28.9%),就業先(18.0%),親族・縁故者(14.9%)の順であった。退所時の職業については,労務作業(46.7%),サービス業(9.9%)の順であり,無職は33.5%であった(法務省保護局の資料による。)。
更生保護施設では,生活技能訓練(SST),酒害・薬害教育等を取り入れるなど,処遇の強化に努めており,平成28年度においては,SSTが35施設,酒害・薬害教育が44施設で実施されている(法務省保護局の資料による。)。
また,平成21年度から,法務省及び厚生労働省が連携し,適当な帰住先がなく,かつ,高齢又は障害により直ちに自立することが困難である受刑者等に対する特別調整を行っているが(本編第4章第2節5項,本章第1節2項及び第7編第3章第1節2項参照),出所後直ちに福祉による支援を受けることが困難な者は,一旦更生保護施設において受け入れ,福祉への移行準備及び社会生活に適応するための指導や助言を内容とする特別処遇を行っており,その役割を担うための施設(指定更生保護施設)が指定されている(詳細については,第7編第3章第1節2項(2)イ参照)。
さらに,平成25年度からは,薬物依存者に対して重点的な処遇を実施する施設を「薬物処遇重点実施更生保護施設」として指定する取組を開始している(詳細については,第7編第3章第1節1項(3)参照)。