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平成27年版 犯罪白書 第6編/第2章/第5節/2

2 保護観察
(1)保護観察開始人員

強姦,強制わいせつについて,仮釈放者,保護観察付執行猶予者,保護観察処分少年及び少年院仮退院者の保護観察開始人員並びに執行猶予者の保護観察率の推移(最近30年間)を見ると,6-2-5-3図のとおりである。

強姦の保護観察開始人員は,いずれの保護観察の種別においても,平成26年は昭和60年と比べると減少している。仮釈放者では約35%減少し,保護観察付執行猶予者では約7分の1に,保護観察処分少年では約18分の1に,少年院仮退院者では約4分の1になった。一方,強制わいせつの保護観察開始人員は,いずれの保護観察の種別においても,平成26年は昭和60年と比べると増加しており,仮釈放者で約3.3倍,保護観察付執行猶予者で約3.4倍,保護観察処分少年で約2.0倍,少年院仮退院者で約3.9倍になった。平成26年は,いずれの保護観察の種別においても,強制わいせつの保護観察開始人員が,強姦の同人員を上回った。

また,平成26年の執行猶予者の保護観察率について,強姦は30.3%であり,強制わいせつは24.9%であった。強姦,強制わいせつ共に,執行猶予者総数の保護観察率(10.0%。2-5-2-1図参照)と比べて高かった。

6-2-5-3図 強姦・強制わいせつ 保護観察開始人員・執行猶予者の保護観察率の推移
6-2-5-3図 強姦・強制わいせつ 保護観察開始人員・執行猶予者の保護観察率の推移
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(2)保護観察対象者の特徴
ア 年齢層

強姦,強制わいせつの仮釈放者及び保護観察付執行猶予者について,平成22年から26年までにおける保護観察開始人員の年齢層別構成比を見ると,6-2-5-4図のとおりである。

仮釈放者,保護観察付執行猶予者共に,総数と比べると,39歳以下の者の割合が高い。

6-2-5-4図 強姦・強制わいせつ 保護観察開始人員の年齢層別構成比
6-2-5-4図 強姦・強制わいせつ 保護観察開始人員の年齢層別構成比
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イ 保護観察期間

強姦,強制わいせつの仮釈放者及び保護観察付執行猶予者について,平成22年から26年までにおける保護観察開始人員の保護観察期間別構成比を見ると,6-2-5-5図のとおりである。

参考までに,平成26年の仮釈放者総数の保護観察開始人員の保護観察期間(2-5-2-3図<1>参照)と比べると, 強姦,強制わいせつ共に,3月を超える者の割合が高く,特に強姦では6月を超える者が全体の約3分の1であった。同様に,26年の保護観察付執行猶予者総数の保護観察期間(同図<2>参照)と比べると,強姦,強制わいせつ共に,保護観察期間が3年を超える者の割合が高かった。

6-2-5-5図 強姦・強制わいせつ 保護観察開始人員の保護観察期間別構成比
6-2-5-5図 強姦・強制わいせつ 保護観察開始人員の保護観察期間別構成比
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ウ 居住状況

強姦,強制わいせつの仮釈放者,保護観察付執行猶予者,保護観察処分少年及び少年院仮退院者について,平成17年から26年までにおける保護観察開始人員の居住状況別構成比を見ると,6-2-5-6図のとおりである。強姦,強制わいせつ共に,いずれの保護観察の種別においても,「両親と同居」の者の割合が最も高い。仮釈放者では,強姦,強制わいせつ共に,親族と同居する者の割合は80%を超えている。強姦の保護観察付執行猶予者では,親族と同居する者の割合は82.6%と高く,単身居住の者の割合が,保護観察付執行猶予者総数と比べると約2分の1であった。

6-2-5-6図 強姦・強制わいせつ 保護観察開始人員の居住状況別構成比
6-2-5-6図 強姦・強制わいせつ 保護観察開始人員の居住状況別構成比
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(3)保護観察終了人員
ア 終了事由

強姦,強制わいせつの仮釈放者,保護観察付執行猶予者,保護観察処分少年及び少年院仮退院者について,平成17年から26年までにおける保護観察終了人員の終了事由別構成比を見ると,6-2-5-7図のとおりである。

強姦,強制わいせつ共に,いずれの保護観察の種別においても,総数と比べると,処分の取消し(仮釈放の取消し,執行猶予の取消し及び保護処分の取消しをいう。以下この節において同じ。)で保護観察が終了した者の割合は低い。また,強姦,強制わいせつ共に,保護観察付執行猶予者は,仮釈放者,保護観察処分少年及び少年院仮退院者と比べて,処分の取消しで保護観察が終了した者の割合が高い。参考までに,強姦,強制わいせつは,平成26年の保護観察付執行猶予者総数の保護観察期間(2-5-2-3図<2>参照)と比べると,保護観察付執行猶予者の保護観察期間(6-2-5-5図参照)の長い者の割合が高いが,執行猶予の取消しの比率は,総数と比べて低い。

6-2-5-7図 強姦・強制わいせつ 保護観察終了人員の終了事由別構成比
6-2-5-7図 強姦・強制わいせつ 保護観察終了人員の終了事由別構成比
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イ 就労状況

強姦,強制わいせつの平成17年から26年までにおける保護観察終了人員について,保護観察終了時の取消・再処分率(保護観察終了人員のうち,再犯若しくは遵守事項違反により仮釈放若しくは保護観察付執行猶予を取り消され,又は保護観察期間中の再非行・再犯により新たな保護処分若しくは刑事処分(施設送致申請による保護処分及び起訴猶予の処分を含む。刑事裁判については,その期間中に確定したものに限る。)を受けた者(双方に該当する者は1人として計上される。)の占める比率をいう。以下この項において同じ。)を,保護観察終了時の就労状況別に見ると,6-2-5-8図のとおりである。強姦,強制わいせつ共に,全罪名・全非行名の保護観察終了人員の取消・再処分率と比べると,有職者,無職者のいずれも取消・再処分率は低い。

無職者と有職者の取消・再処分率を比較して見ると,全保護観察終了人員では,全罪名・全非行名で約3.3倍,強姦で約3.2倍,強制わいせつで約2.7倍であった。保護観察の種別ごとに,全罪名又は全非行名の保護観察終了人員における有識者と無職者の取消・再処分率を比較した値と,強姦,強制わいせつの保護観察終了人員における有職者と無職者の取消・再処分率を比較した値とを比べて見ると,強姦では,保護観察付執行猶予者(約3.6倍)と少年院仮退院者(約5.1倍)が高く,強制わいせつでは,保護観察処分少年(約5.1倍)が高かった。また,強姦,強制わいせつ共に,仮釈放者は,無職者と有職者の取消・再処分率には大きな開きはなかった。

6-2-5-8図 強姦・強制わいせつ 保護観察終了人員の取消・再処分率(終了時の就労状況別)
6-2-5-8図 強姦・強制わいせつ 保護観察終了人員の取消・再処分率(終了時の就労状況別)
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