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平成25年版 犯罪白書 第7編/第4章/第1節/1

第4章 グローバル化に対応した刑事政策等の取組
第1節 出入国管理等における対応
1 出入国管理の強化

経済活動のグローバル化や国家間の賃金格差等を背景に外国人入国者数が増加したが,これとともに不法滞在者も増大し,これに対処するため,累次にわたり様々な施策が実施されてきた。

「犯罪に強い社会の実現のための行動計画」(平成15年12月策定)では,重点課題の一つとして「国境を越える脅威への対応」が掲げられ,国民が安心して暮らすことができるようにし,また,平穏かつ適法に滞在している多くの外国人に対する無用の警戒感を払拭することが必要であるとして,犯罪の温床となる不法滞在者を平成16年から20年までの5年間で半減させる目標が示された。

これを受けて,平成16年に入管法が改正され,不法残留や不法就労助長等の罪に係る法定刑の引上げ及び二度以上退去強制された者についての上陸拒否期間の伸長がなされたほか,不正の手段により入国するなどした外国人や在留資格に該当する活動を行っていない外国人の在留資格を取り消すことのできる在留資格取消制度が導入された。その一方で,入国管理局への自主的な出頭を促すため,不法残留者のうち一定の条件を満たし,出国を希望して自ら出頭した者については,身柄を収容せず簡易な手続により出国させた上,出国後の上陸拒否期間を短縮する出国命令制度が導入された。

また,平成17年に事前旅客情報システムAPIS:Advance Passenger Information System)が導入され,航空機が我が国に到着する前に,航空会社から提供される旅客の身分事項等に関する情報を入国管理局等保有の要注意人物に関するデータベースと照合することにより,事前に要注意人物の到着に備えた体制を確保して厳正な上陸審査等を行えるようになった。

さらに,平成19年11月,特別永住者等を除く外国人に対し,上陸審査時に個人識別情報(指紋と顔写真)の提供が義務付けられ,入国管理局が保有する情報との照合により,偽変造旅券や他人名義旅券を利用して不法入国しようとする外国人テロリストや退去強制歴を有する者等を水際で発見し入国を阻止することが容易となった。個人識別情報の活用による退去命令者及び退去強制者は,24年5月末現在で累計約3,400人である(法務省入国管理局の資料による。)。

こうした施策に加え,入国管理局と警察等が連携を強化して不法滞在者の合同摘発を推進したほか,司法警察員が不法入国等の入管法70条の罪の他に嫌疑のない被疑者を検察官に送致せず入国警備官に引き渡す同法65条の運用拡大,入国・在留審査の厳格化や不法就労防止のための広報活動,入国審査官や入国警備官の増員による出入国管理体制の強化等が実施された。

これらの取組の結果,平成16年当時,約25万人いたと見られる不法滞在者は,21年1月には約13万人に減少して(法務省入国管理局の資料による。),当初の半減計画はほぼ達成され,その後も不法残留者は減少し続けていると認められる(7-2-1-1-8図参照)。


個人識別情報を活用した入国審査風景
個人識別情報を活用した入国審査風景

入国警備官の点検風景
入国警備官の点検風景