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平成25年版 犯罪白書 第7編/第2章/第1節/1

1 人の移動とグローバル化
(1)出入国管理制度の概要

人の国際的な流動は,我が国においては,法務省入国管理局が所管する出入国管理制度の中で把握される。外国人は在留資格を与えられて初めて本邦に適法に入国し,在留することができ,在留資格のない者は基本的に本国に退去強制となる。在留資格は来日や滞在の目的に応じて多岐にわたり,在留期間も在留資格等により大きく異なる。そこで,我が国における人の国際的な流動を把握する前提として,我が国の出入国管理制度の概要を理解しておく必要がある。

来日する外国人の出入国と在留の管理については,主として入管法に規定されている。外国人の出入国と在留手続の流れの概要は,7-2-1-1-1図のイメージのとおりである。


7-2-1-1-1図 外国人の出入国・在留手続の流れ(イメージ)
7-2-1-1-1図 外国人の出入国・在留手続の流れ(イメージ)

外国人が入国する場合,原則として,海外にある日本大使館等で取得した査証(ビザ)のある有効な旅券を所持した上,空港等において入国審査官に上陸申請し,上陸許可の証印を受けなければならない。上陸審査の結果,上陸のための条件に適合しない外国人(有効な旅券及び査証を所持していない場合,我が国で行う予定であると申請された活動が虚偽のものではないと認められない場合,上陸拒否事由に該当する場合(例えば,過去に1年以上の懲役又は禁錮等の刑に処せられたことがある場合)等)は,原則として,上陸は許可されない。

上陸を許可された外国人は,通常,我が国における活動内容等に応じたいずれかの在留資格(30種類ある。)と各在留資格に応じた在留期間の決定を受けて在留することとなる(在留資格については,7-2-1-1-6図参照)。なお,資格活動の許可を受けている場合を除き,当初の在留資格では認められない活動をしようとする場合は,新たな活動に対応する在留資格への変更の許可を受ける必要があり,また,在留期間の満了日を超えて引き続き同じ在留資格で滞在する場合には,在留期間更新の許可を受ける必要がある。永住者の在留資格は,在留期間は無期限のため在留期間更新許可の手続は不要となる。ただし,在留カードの有効期間の更新手続は必要である。

有効な旅券を所持せずに入国した不法入国者や在留期間を経過して残留する不法残留者等の不法滞在者及び一定の刑罰法令違反者等の退去強制事由に当たる者に対しては,退去強制手続が執られることになる(刑事手続と退去強制の流れは,7-2-2-2-1図参照)。ただし,退去強制事由が存する場合であっても,配偶関係や親子関係等,日本人と密接な身分関係を有し,実態として我が国に生活の基盤を築いているなどの事情があると認められるときには,法務大臣が在留を特別に許可(在留特別許可)する場合がある。なお,退去強制された者については,退去強制事由等の違いにより,退去した日から5年間,10年間又は期限の定めなく,原則として上陸を拒否されることとなる。

(2)出入国・在留者の動向

7-2-1-1-2図は,外国人の新規入国者数と日本人の出国者数の推移(平成元年以降)を見たものである。外国人の新規入国者数は,大幅な増加傾向にあり,22年には約792万人と過去最高を記録した。東日本大震災等の影響により23年に一時的に減少したものの,24年には約755万人となり,元年(約246万人)と比較すると,約3倍に達している。24年の新規入国者の国籍等を見ると,韓国(約190万人),台湾(約143万人),中国(台湾及び香港等を除く。約105万人),米国(約67万人)の順に多く,これら4か国等で全体の約3分の2を占めている(CD-ROM参照)。在留資格は,短期滞在が96.0%を占めている(法務省入国管理局の資料による。)。


7-2-1-1-2図 外国人新規入国者数・日本人出国者数の推移
7-2-1-1-2図 外国人新規入国者数・日本人出国者数の推移
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日本人の出国者数についても,大幅な増加傾向にあり,最近では19年から一時的に減少したものの,22年に増加に転じ,24年には約1,849万人と過去最高となっている。

外国人登録者数・在留外国人数(平成23年までは外国人登録者数,24年は在留外国人数。在留外国人数は,中長期在留者と特別永住者の合計であり,外国人登録者数は,外国人登録者全てであり,すなわち,中長期在留者及び特別永住者に加え,現行制度上の中長期在留者には該当しない3月以下の在留期間が決定された者や短期滞在の者のうち外国人登録をした者が含まれる。いずれも各年末現在の数である。)と我が国の総人口に対する比率の推移は,7-2-1-1-3図のとおりである。外国人登録者数は,定住者の在留資格が新設された2年に100万人を超え,その後,定住者の在留資格で来日する日系ブラジル人や日本人の配偶者等の在留資格で来日するフィリピン人等が増加したこともあり,17年に200万人の大台を突破した。20年に約222万人と過去最高を記録した後,いわゆるリーマンショックを契機とした不況により職を失った日系人等が本国に帰国したことなどから,漸減したものの,17年以降,外国人登録者数・在留外国人数は,200万人以上を維持している。元年における我が国の総人口に対する外国人登録者数の比率は0.80%であったが,24年の総人口に対する在留外国人数の比率は,1.59%である(法務省入国管理局の「在留外国人統計」,同局の資料及び総務省統計局の人口資料による。)。


7-2-1-1-3図 外国人登録者・在留外国人数・我が国総人口に対する比率の推移
7-2-1-1-3図 外国人登録者・在留外国人数・我が国総人口に対する比率の推移
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平成24年末現在の在留外国人数の都道府県別構成比は,7-2-1-1-4図のとおりである。


7-2-1-1-4図 在留外国人数の都道府県別構成比
7-2-1-1-4図 在留外国人数の都道府県別構成比
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平成24年末現在の在留外国人の国籍等別構成比は,7-2-1-1-5図のとおりであり,中国,韓国・朝鮮,フィリピン,ブラジルの順に多く,これら4か国等で8割弱を占める。2年以降,この上位4か国等は共通であるが,その順位には変動があり,18年までは韓国・朝鮮が最も多く,次いで,中国,ブラジル,フィリピンの順であったが,19年以降は中国が韓国・朝鮮を逆転し,24年には,フィリピンがブラジルを逆転した(法務省入国管理局の資料による。)。


7-2-1-1-5図 在留外国人数の国籍等別構成比
7-2-1-1-5図 在留外国人数の国籍等別構成比
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入管法に規定されている在留資格の種類は,7-2-1-1-6図のとおりである。このうち永住者の在留資格については,入国時点で付与されることはなく,他の在留資格で在留する外国人や永住者の子等として日本で出生した者等からの申請に対し,一定の要件を満たす場合に付与される。また,在留資格ごとに在留期間が定められている。


7-2-1-1-6図 在留資格の種類
7-2-1-1-6図 在留資格の種類

なお,これらの在留資格により在留する外国人のほかに,終戦前から我が国に引き続き在留し,日本国との平和条約の発効に伴い日本国籍を離脱した者及びその子孫(いわゆる在日韓国・朝鮮人等)を対象とする入管特例法に基づき特別永住者として在留する者がいる。

7-2-1-1-7図は,外国人登録者・在留外国人の在留資格等別構成比について平成4年末と24年末を比較したものである。永住者の占める割合が4年末では3.5%であったのに,24年末では30.7%と著しく上昇しており,24年末で最も多い在留の資格となっている。これについては,定住者の在留資格で入国する日系人や日本人の配偶者等の在留資格で入国する者等が増加し,これらの者で長期間在留する者が徐々に永住者の在留資格へ移行していったことが背景の一つとして考えられる。また,永住者,定住者,日本人の配偶者等及び永住者の配偶者等の入管法別表第二の在留資格(以下この編において「居住資格」という(7-2-1-1-6図参照)。)の構成比は,4年は約3割であったが,24年には半数近くを占めるようになり,20年前からの在留者数全体の増加を併せ考慮すると,居住・定住型の在留者が大幅に増加していることが分かる。同法別表第一の在留資格(以下この編において「活動資格」という(同図参照)。)の者も全体として増加している。


7-2-1-1-7図 外国人登録者・在留外国人の在留資格等別構成比
7-2-1-1-7図 外国人登録者・在留外国人の在留資格等別構成比
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在留者数が多い4か国等(中国,韓国・朝鮮,フィリピン,ブラジル)について,平成4年末の外国人登録者と24年末における在留外国人の在留資格等別構成比の変化を見ると,中国は,4年が留学(就学を含む。33.7%),日本人の配偶者等(14.9%)の順で高かったのに対し,24年は永住者(29.7%),留学(17.6%)の順であった。居住資格の者の割合は約4割でほとんど変化がない。韓国・朝鮮は,4年が特別永住者(85.0%),日本人の配偶者等(3.2%)の順に高く,24年は特別永住者(71.2%),永住者(11.8%)の順であった。なお,特別永住者の割合が高く,居住資格の者の割合はいずれの年も2割に満たない。フィリピンは,4年が日本人の配偶者等(45.6%),興行(32.3%)の順に高く,24年は永住者(52.4%),定住者(20.1%)の順となり,居住資格の者の割合は半数強から9割以上に上昇している。ブラジルは,4年が日本人の配偶者等(62.1%),定住者(35.0%)の順に多かったが,24年は永住者(60.1%),定住者(27.8%)の順となり,居住資格の者はいずれの年も95%を超えている(法務省入国管理局の資料による。)。これら4か国等の者は,いずれも永住者の占める割合が20年間で大きく上昇し,24年では,韓国・朝鮮を除き,永住者が最も比率の高い在留資格となっている。

我が国に在留する外国人には,在留の資格を有する者のほか,不法に滞在する者もいる。7-2-1-1-8図は,不法滞在者の大半を占めると推測される不法残留者数の推移(平成2年以降)を見たものである。不法残留者数は,平成5年の約30万人をピークに一貫して減少しており,25年1月現在では約6万人にまで激減している。国内の景気低迷や国内外の雇用情勢の変化による影響のほか,水際における入国審査の厳格な対応,警察等との密接な連携による入管法違反外国人の積極的な摘発,不法就労防止に関する積極的な広報等,総合的な不法滞在外国人対策の効果によるものと思われる(本編第4章第1節参照)。なお,不法残留者数の減少に伴い,退去強制手続が執られた外国人の数も減少傾向にあり,24年は1万5,178人であった(法務省入国管理局の資料による。)。


7-2-1-1-8図 不法残留者数の推移
7-2-1-1-8図 不法残留者数の推移
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外国人労働者の雇用・離職の状況については,雇用対策法及び地域雇用開発促進法の一部を改正する法律(平成19年法律第79号)により改正された雇用対策法(昭和41年法律第132号)に基づき,平成19年10月1日から,全ての事業主に厚生労働大臣への届出が義務付けられた。24年10月末現在,同届出に係る外国人労働者を雇用する事業所は11万9,731か所,外国人労働者数は68万2,450人であり(厚生労働省職業安定局の資料による。),その国籍等別,在留資格等別の構成比は,7-2-1-1-9図のとおりである。就労活動の内容に制限のない居住資格をもつ者が5割弱を占めている。


7-2-1-1-9図 外国人雇用状況の届出状況(国籍等別・在留資格等別)
7-2-1-1-9図 外国人雇用状況の届出状況(国籍等別・在留資格等別)
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7-2-1-1-10図は,日本人の国際結婚(夫又は妻が外国人である場合をいう。)数の推移(平成元年以降)を見たものである。国際結婚は,平成18年の約4万5,000件をピークにその後減少し,24年は約2万4,000件であった。国際結婚の件数が初めて1万件を超えた昭和58年当時と比べ,依然として多いといえる。50年以降は一貫して妻が外国人の場合の方が多く,平成24年では夫が外国人である場合の約3倍である。国際結婚の増加に伴いその離婚数も増加しており,10年に初めて1万件を超え,21年のピーク時には約1万9,000件となり,24年は約1万6,000件である(厚生労働省大臣官房統計情報部の「人口動態統計」による。)。


7-2-1-1-10図 国際結婚件数の推移
7-2-1-1-10図 国際結婚件数の推移
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なお,近年,国際結婚及びその破綻の増加に伴い,諸外国との間で子の連れ去り等をめぐる問題が発生している。国境を越えた子の連れ去りは,子に様々な悪影響を与え得るものであり,子の利益が最重要であるとの認識から,このような事態の発生を防止し,また,元の居住国に子を迅速に返還するための国際協力の仕組みや国境を越えた親子の面会交流の実現のための協力を定めた「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約」(ハーグ条約)への加入が平成25年5月に国会で承認された。

7-2-1-1-11図は,海外在留邦人数の推移(平成15年以降)を見たものである。海外在留邦人数は,15年以降,一貫して増加しており,同年は91万1,062人であったところ,23年には118万2,557人であり,長期滞在者,永住者共,一貫して増加している。


7-2-1-1-11図 海外在留邦人数の推移
7-2-1-1-11図 海外在留邦人数の推移
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