7-3-2-5-1図は,調査対象者の少年院入院時の処遇課程(第3編第2章第4節2項(1)ウ参照)を見たものである。「外国人で,日本人と異なる処遇を必要とする者」を対象者とするG2課程よりも,職業能力開発課程(V1又はV2課程)の者の方が多い。これには,7-3-2-4-4図<1>で見たとおり,日本語による会話がある程度できる者が相当数おり,日本語能力,日本社会の風俗習慣の理解等の点において,日本人と一緒に処遇する前提が整いやすいことが背景にあるものとうかがわれる(なお,日本人を含む少年院入院者の処遇課程等の人員については,3-2-4-9表参照)。
少年院に入院する外国人には,日本語能力に問題のある者も少なからず見受けられるため,少年院では,教育の一環として日本語教育を行う場合がある。7-3-2-5-2図は,調査対象者について,日本語教育の有無及び内容を見たものである。
次に,調査対象者のうち,平成23年11月30日までに出院した90人(以下この項において「出院調査対象者」という。なお,仮退院が89人,退院が1人である。)について,入院時と出院時の日本語能力を対比したのが7-3-2-5-3図である。少年院における処遇の結果,出院時には,「片言の会話のみ可」及び「会話不可」の者がいなくなり,ほとんど全員が日本語能力を向上させ,又は日常会話ができる水準にあることがうかがえる。特に,入院中,少年院で最も重点を置いて実施した指導・教育の上位三つに「日本語教育」が含まれる者は,それ以外の者と比べて,出院時の日本語能力が向上している割合が高い。
調査対象者の出院時の日本語能力を来日時年齢類型別に見ると,出院時に「日常会話可」の者は,日本出生者及び小学校期以前の来日少年では64人中62人であるが,中学校期では13人中10人,高校期では10人中5人である。来日時期が遅い者の場合,入院時でも,日本語以外の言語を日常の使用言語とする者が多いとの特徴が見られたが(7-3-2-4-5図参照),少年院における処遇を経た出院時においても,なお日本語能力に課題を残しやすいことがうかがえる。
出院調査対象者90人のうち,在院中に何らかの資格・免許を取得した者は,73人(81.1%)に上る。取得した資格・免許(重複計上による。)は,小型車両系建設機械運転特別教育(21人),危険物取扱者(19人),アーク溶接特別教育(13人),ガス溶接技能講習(12人)の順に多い(少年院入院者全体の資格・免許取得状況については,第3編第2章第4節2項(2)イ参照)。
7-3-2-5-4図は,出院調査対象者の出院時の引受人を見たものである。父又は母が引受人である者は81.1%であり,特に永住者では,94.7%に上る。
7-3-2-5-5図は,出院調査対象者の出院後の進路別構成比を見たものである。出院時に入国管理局に引渡しになる者以外のほとんどが,日本で就職・就学が決定し,又はこれを希望している。調査対象者の大半が,中長期滞在が可能な在留資格である定住者,永住者又は日本人の配偶者等であったこと(本節2項(1)参照)からも,実際に,出院後も日本に中長期間在住する場合が多いと考えられる。一方で,「日本で就職希望」又は「日本で就職決定」の者(64人)のうち「日本で就職決定」の者は18.8%に過ぎず,同時期の少年院出院者総数(ただし,出院調査対象者を除く。)では34.0%であるから,これと比べると非常に低い結果となっている。外国人少年院出院者は,在院中に何らかの資格・免許を取得するものの,それでもなお日本における就職は厳しい状況であることがうかがえる。